2014 Fiscal Year Research-status Report
皮膚腫瘍におけるヒトパピローマウイルス感染の検討と病変形成メカニズムの解明
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25461683
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
清水 晶 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70396638)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒト乳頭腫ウイルス / ボーエン病 / 新規HPVクローニング / 多発性疣贅 / 免疫不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
<皮膚腫瘍におけるHPVの網羅的な検出> 有棘細胞癌38例よりDNAを抽出し、悪性型のHPVをよく検出するL1C1/L1C2プライマー、良性悪性を問わず幅広くHPVを検出できるGP5+/6+プライマー、CPプライマーで比較検討した。HPV陽性例ではin situ hybridization(DAKO社Genpoint system)を行い、ウイルスの局在を確認した。結果は陽性例は2例のみであり、共にHPV16型であった。興味深いことに、陽性例は外陰部有棘細胞癌であり、好塩基性で特徴的な病理組織であった。HPV陽性の外陰部有棘細胞癌のほとんどはアジアからの報告である。欧米の報告に比べ低検出率であり、有棘細胞癌のHPV感染率は地域差があると思われた。これらの報告は昨年British Journal of Dermatologyに掲載された(171(4):779-85.2014)。爪甲色素線条型ボーエン病はHPV56型感染で生じる例が多い。今回我々は、爪甲色素線条型ボーエン病からHPV67型を検出した。通常爪甲色素線条は爪の辺縁に生じるケースが多いが、自験例は爪甲中心に生じている稀な例であった。HPV67型による爪甲色素線条型ボーエン病は初の報告であった。これらの結果は、Acta Derm Venereol に掲載された。(in press)
<新規HPVの探索> 転写因子に変異を有する多発性疣贅の症例を経験した。手足に多発する疣贅から、疣贅状表皮発育異常症で通常検出されるウイルスに近縁のHPV105型を検出した。HPV105型以外にこれまでの報告と10%以上異なる配列を有するHPVを検出している。現在全配列の確認を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非常に稀な、転写因子に変異を有する多発性疣贅の症例を経験した。患者血液と皮膚における免疫状態を調べることにより、HPVの感染メカニズムを明らかにすることが可能である。樹状細胞の欠損が疑われており、これらの細胞とHPV感染の関連を研究中である。概要にも記したが、新規HPVも検出できる可能性があり、予想以上の成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、3次元皮膚モデルにより、HPVを感染させることにより、人工的な皮膚腫瘍を形成させることも予定していた。しかし、上記の様に、転写因子に変異を有する多発性疣贅の症例を研究対象とすることで、3次元皮膚モデル以上にHPVの感染メカニズムを明らかにすることが可能でとなった。現在患者の免疫状態、HPVの感染状況を詳細に検討中である。
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Causes of Carryover |
これまでに購入した試薬を節約しながら使用した。HPVのタイピングは多数例に及ぶため、試薬量を可能な限り少量にする実験条件を検討した結果である。他にもシークエンシングなども依頼する前に丁寧にDNA精製を行うなど、無駄な支出をなくすよう心掛けた。先に記したように大きな実験計画が今後控えており、残額はそちらで使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額も含め、今後は先に記したように、これまでの計画に加え、転写因子異常による多発性疣贅の発症メカニズムを探るために使用する。HPV易感染性の免疫状態と感染HPVのプロファイルを明らかにすることができ、本研究課題の目標であるHPVによる皮膚病変形成メカニズム解明につながる。
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Research Products
(2 results)