2014 Fiscal Year Research-status Report
牛肉アレルギー患者で持続的に高発現される好塩基球CD203cの活性化機序の解明
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25461693
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
千貫 祐子 島根大学, 医学部, 講師 (00294380)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 牛肉アレルギー / α-gal / マダニ / 血液型 / 糖鎖 / 好塩基球活性化試験 / カレイ魚卵 / セツキシマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
牛肉アレルギー患者の好塩基球CD203cが持続的に活性化されているのは、牛肉アレルギーの感作経路の特殊性、また、原因抗原の特殊性に起因していることが考えられる。 これまでの研究において、本邦における牛肉アレルギーが、日本紅斑熱の媒介種であるマダニHaemaphysalis longicornis咬傷によって生じうること、牛肉アレルギーの主要原因抗原である糖鎖構造galactose-α-1, 3-galactose (α-gal)との関連で、牛肉アレルギー患者は他の種々の食物、薬剤に対してもアレルギーを発症しうること、さらにα-galと類似の糖鎖構造を有すると考えられる血液型B型、AB型の人は牛肉アレルギーを発症しにくいこと、を解明した。 これら一連の交差反応に基づき、我々は牛肉アレルギー患者がカレイ魚卵にもアレルギー反応を生じることを突き止めており、その原因抗原同定を行った。抗α-gal抗体を用いた実験の結果、カレイ魚卵には糖鎖構造α-galは存在しておらず、カレイ魚卵アレルギーの原因抗原エピトープは、糖鎖構造α-galに類似した、別の糖鎖構造であることが考えられた。更に、糖鎖構造α-galを有する抗悪性腫瘍薬のセツキシマブによるアナフィラキシー患者の実態解明も進めている。 牛肉アレルギー患者の好塩基球が持続活性化状態にあることが、種々のアレルギー反応の一因と考えられ、今後はタンパク質のみならず糖鎖構造にも着目した研究が必要になると考えられる。 なお、本研究に関する一部の内容を報告した論文が、平成26年度日本皮膚科学会・雑誌論文賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の研究によって、本邦における牛肉アレルギーについて、マダニ咬傷による感作の可能性、主要原因抗原エピトープが糖鎖構造α-galであること、カレイ魚卵や抗悪性腫瘍薬のセツキシマブにも交差反応を生じること、また血液型によって発症しやすさが異なること、など種々の点が明らかとなってきている。これらのことは、牛肉アレルギー患者の好塩基球が持続活性化状態にあることが一因であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
牛肉アレルギー患者血清をラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3)に添加して、添加前後のシグナル伝達系の活性を測定し、牛肉アレルギー患者の好塩基球CD203cの持続活性化状態の機序を明らかにする。 また、今年度は、これまで解明した研究成果を英文論文にてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究を開始する以前から、種々の食物アレルギーについて免疫ブロット法や好塩基球活性化試験を行っており、当該年度は試薬や検査キットに余裕があったため、新たに購入する必要性が低く、当該年度の実支出額が減少し、次年度に使用することといたしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの実験で、検査試薬や検査キットが減少したため、次年度は試薬や検査キット、さらに培養細胞の購入を行う予定である。 また、次年度は論文作成のための英文校正、さらに成果発表旅費にも使用する予定である。
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