2014 Fiscal Year Research-status Report
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25461710
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山上 淳 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80327618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 勇人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40398615)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天疱瘡 / 自己免疫疾患 / 濾胞ヘルパーT細胞 / 自己反応性B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
天疱瘡は、表皮角化細胞同士の接着分子であるデスモグレイン(Dsg)に対する自己抗体により生じる自己免疫疾患である。自己抗体の産生には、Dsg特異的B細胞の活性化が不可欠と考えられるが、その機構はまだ明らかにされていない。近年、二次リンパ組織の濾胞胚中心に存在する濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)が、B細胞の活性化および分化と抗体産生において重要な役割を果たすことが報告されてきた。本研究は、天疱瘡におけるDsg特異的B細胞とTfhの解析を通じて、自己抗体産生機構の解明をめざしている。 昨年度に引き続き、天疱瘡患者の末梢血中からTfhの特徴を有する細胞(Tfh様細胞)の検出をフローサイトメトリーで試みるとともに、天疱瘡モデルマウスを用いたDsg3特異的B細胞の解析を行った。 未治療の尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡患者の末梢血から単核球を抽出し、フローサイトメトリーでCD3およびCD4陽性の細胞集団を展開して、Tfhのマーカーとして知られるCXCR5およびPD-1、ICOSを高発現している細胞をTfh様細胞として観察した。天疱瘡患者の末梢血単核球で、Tfh様細胞がCD3およびCD4陽性細胞のうち2~3%で見られ、治療後に血清中の抗Dsg抗体が減少すると、70%の症例で末梢血中のTfh様細胞の割合も1%程度減少することがわかった。 天疱瘡モデルマウスは、Dsg3欠損マウスをDsg3の組み換え蛋白で免疫し、その脾細胞を免疫不全マウス(Rag2欠損マウス)に移入することで作成される。天疱瘡モデルマウスのリンパ節、脾臓、骨髄における抗Dsg3抗体産生細胞をELISPOT assayで検出した。現在、天疱瘡モデルマウスからCXCR5、PD-1、ICOSといった表面マーカーを使ってTfhの単離を試みており、Tfhの存在が抗Dsg3抗体産生細胞の活性に与える影響について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天疱瘡患者の末梢血からTfh様細胞が検出され、治療による症状の軽快および抗Dsg抗体価の低下とともに、Tfh様細胞の減少が確認されたことは大きな進展であった。ただしTfh様細胞としての単離にはまだ至っておらず、最終的に単離に使用する表面マーカーをPD-1にすべきかICOSにすべきかなど、さらなる条件検討が必要と考えられる。天疱瘡は稀少疾患である上に、1症例から得られる末梢血は10~20ml程度であり、ステロイドなどで治療を開始した後には状況が一変してしまう。至適条件の検討のための実験機会が限られるので、Tfh様細胞の単離にはもう少し時間が必要と考えられる。その間、Th1、Th2、Th17の各サブセットに注目して、CXCR5の発現によるIL21などのサイトカイン産生量の比較を行うなど、詳細な検討を加えて情報量を増やしていきたいと考えている。 天疱瘡モデルマウスを用いた実験では、抗Dsg3抗体産生細胞を検出するELISPOT assayは動いているので、その活性化に関わるTfhを評価するための環境は整っている。異なる表面マーカーで単離したT細胞サブセットのB細胞活性化能の比較が可能と考えられる。Tfhの候補と目されるさまざまT細胞サブセットとDsg3特異的B細胞を反応させ、ELISPOTでDsg3に対する抗体産生能が増強するかを観察するとともに、脾臓、リンパ節、骨髄など各部位における反応性を比較することで、Tfhの局在についても解析が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.抗原特異的B細胞活性化の分子機構の解明(ヒト、マウス): B細胞の活性化に必要なサイトカインとして、IL-4、IL-21などが知られており、TfhまたはTfh様細胞存在下でDsg特異的B細胞が活性化されるときのBcl-6、ICOS、SAPなどの転写制御因子およびTh1、Th2、Th17それぞれの系のヘルパーT細胞に関連するサイトカイン、ケモカインの発現についてRT-PCRで評価する。 2.Tfh様細胞の機能を規定する分子機構の解明(ヒト): B細胞との相互作用を起こすTfh様細胞の機能に重要な分子を検討する。Tfhの分化に必要とされるBcl-6に加え、これまでの研究からICOS、SAP、IL-21などの発現が増強していることは予想される。さらにDsg刺激を加えたTfh様細胞について、ELISPOTでサイトカイン産生の変化を検討するとともに、microarray解析を行って強発現している因子を探索する。 3.Tfh様細胞により活性化されるDsg特異的B細胞を亜集団として標識する(ヒト):Tfh様細胞により活性化されるB細胞の特徴を検討する。末梢血リンパ球をあらかじめCD23など活性化B細胞の表面マーカーとして知られる抗体で標識しておき、Tfhと反応するB細胞の集団をフローサイトメトリーで展開して、亜集団として標識できる表面マーカーについて検討する。 4.天疱瘡の病勢におけるDsg特異的B細胞活性化の検討(ヒト): 同一の天疱瘡患者において、病勢の強い活動期と病変の新生がない寛解期で、Dsg特異的細胞とTfh様細胞との相互作用を比較する。治療により病勢が低下した患者においては、Tfh様細胞が検出されないことも予測されるが、なお単離できる場合にはB細胞に対する相互作用の強弱、Bcl-6、ICOS、SAP、IL-21といった分子の発現について各病期を比較する。
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Causes of Carryover |
消耗品を主体に研究費を執行しており、研究室で所有していた試薬を共用することにより研究費を節約できたためと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり、消耗品費を中心に使用する予定である。
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