2013 Fiscal Year Research-status Report
皮膚の初期原基、表皮外胚葉の分化運命決定機序の解明
Project/Area Number |
25461720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
吉田 千春 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60360666)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 表皮細胞 / 発生 / マウス胎児 |
Research Abstract |
マウスembryonic stem cell (ES細胞)は多分化能を持った細胞であり、ある条件化で培養を行うことで、様々な細胞種に分化誘導することが知られている。そこで本年度では、ES細胞から表皮細胞の誘導システムの確立と、表皮マスター因子(後述参照)を過剰発現させた際の表皮細胞の変化を検討した。 まず、ES細胞から表皮細胞への分化条件については、他グループによって報告があり(Troy et al., 2005)、彼らの条件をもとに検討を行った。結果、ES細胞をマトリゲルコート、又はコラーゲンコート上で培養を行うと、最も初期の表皮マーカーであるTROMAI(Keratin8)が細胞塊周辺で出現することがわかった。またこれらTROMAI陽性細胞は未分化性を示すOct3/4の発現が顕著に下がっていることがわかった。一方TROMAI以外の表皮マーカーは誘導されないことがわかった。 次に表皮マスター因子を、上記培養条件中に過剰発現させ、その効果を検討した。ちなみに表皮マスター因子とは、研究代表者が前年度までにマウス胎児の表皮組織と神経組織間のDNAマイクロアレイを行い、表皮で優位に発現する転写因子として同定した因子である。この転写因子を過剰発現させたトランスジェニックマウス胚では、神経上皮の一部が表皮化することも明らかにしている(未発表データ)。そこでこの表皮マスター因子をES細胞にトランスフェクションし、検討した。結果、これまでは初期表皮マーカーのみしか誘導されなかったのが、表皮マスター因子を過剰発現させた場合、TROMAIタンパク以外にさらに分化が進んだ際に見られるAP2a、AP2b、Krt17/19などの発現誘導され、またそれら細胞は巨大化することがわかった。今後、これら表皮マスター因子によって形成される表皮巨細胞の役割を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、ES細胞からの表皮誘導が恒常的に行える実験系を確立出来たことが、成果として大きいと考えている。これまで、実験代表者が主に扱っている対象物が、マウスの個体レベルであった。個体を扱うデメリットとして、発生期の一時的に現れる表皮の動態を検討するには、細胞数が少ないなどの理由から生化学的な実験が大変困難であった。それが今年度の研究結果によって培養条件下で様々な表皮を作り出す事が出来たのは、今後の表皮研究において多くの実験系を可能にしたと考えている。 また、一方、既に同定していた表皮マスター因子が個体内以外にも、ES細胞の培養条件においても大きな影響を及ぼすことが分かったことも大きな成果だと考えている。実際、表皮マスター因子の遺伝子欠損マウス胚では、領域得異的な表皮組織の異常が見られる(未発表データ)。このことからも、in vivo と in vitroの結果に相関性を持たせながら研究を進展出来ると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に確立した培養系を用いて、表皮が誘導される際に必要なシグナル経路を検討する。方法としては、培養条件に様々なシグナル得異的な阻害剤、又は活性化剤を投与して細胞状態の検討を行う。 また、今回誘導に成功した表皮巨細胞が生体内で存在するのか、また存在した場合、その存在意義も検討したいと考えている。存在意義の検討に関しては個体レベル、細胞レベルを平行して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外から輸送を予定していた遺伝子改変動物の購入・搬入が中止となったため、その他で計上していた予算額が大幅に減少したため。 共同研究(北海道大学宛)で行っている細胞輸送を年に数回行う予定である。その輸送費、関連試薬で使用する予定である。
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Research Products
(9 results)