2014 Fiscal Year Research-status Report
皮膚の初期原基、表皮外胚葉の分化運命決定機序の解明
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25461720
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
吉田 千春 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60360666)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表皮 / マウス胎児 / 神経管閉鎖不全 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス胎児期の表皮(将来の皮膚となる組織)発生に注目して、細胞・個体レベルの分子カスケード解明を目指し研究を行なった。特に平成26年度では、マウスの神経胚期(着床後約8日目胚)における表皮形成に、Grainyhead like(Grhl)ファミリーがカノニカルWnt経路の下流で主要な役割を担っていることを明らかにした。またこの時期(神経胚期)未分化性を維持した細胞が、将来の生殖性細胞以外にも存在していることを発見し、その細胞群が表皮と神経に分化することを明らかにしたことは特筆すべき結果といえる。因に、この未分化細胞とは、神経堤細胞(神経堤細胞とは神経堤から生じる細胞群で、非常に多くの細胞へと分化するため、外胚葉、中胚葉、内胚葉の三胚葉に加えて、「第四の胚葉」とも言われる)とは違う細胞群であることもマーカー解析により明らかにしている。この胚性外胚葉由来で未分化性細胞が、神経胚期の表皮と神経上皮の間に存在しており、Grhl遺伝子とカノニカルWnt拮抗因子(dickkopf1遺伝子)の相反する作用によって、表皮又は神経細胞へと運命決定がなされることを明らかにした。さらに、胎生期の表皮形成異常によって、神経管閉鎖不全(neural tube closure defects; NTDs)が発症することがわかった。これまで、神経形成の異常によりNTDsが見られるという知見は多数報告されているが、表皮形成の異常によってNTDsが見られるという発見は初めての報告となる。これらの研究成果は国際雑誌に投稿し、受理されている。([研究発表]の項参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
表皮形成における個体レベルの解析は、分子機序の解明を含め、順調に進める事が出来ており、またこれらの結果を国際誌に投稿・受理することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮形成過程に必要な分子シグナルを、カノニカルWnt経路以外の関与を検討するため、ES細胞を用いた表皮分化系を用いて研究を進めている。細胞レベルで解析を行なう利点としては、様々なカスケード特異的な阻害剤を培養液に添加することにより、シグナリングの効果を直接的に検討出来、また個体と違って細胞数を増やすことによってタンパクを多量に回収することも容易である。今後、生化学的な解析を含め、表皮形成に必須な分子機序の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
平成26年度には論文投稿に時間が割かれており、また購入予定の試薬も前年度分(平成25年度)に購入したものを効率よく使用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度(平成27年度)は細胞培養を断続的に行なうため、培地に必要な血清を多く使用する予定である。また遺伝子欠損ES細胞や凍結胚を海外から導入したり、自らES細胞へのターゲティングを行い、新たな遺伝子改変マウスの作製を試みる。
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Research Products
(3 results)