2015 Fiscal Year Research-status Report
皮膚の初期原基、表皮外胚葉の分化運命決定機序の解明
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25461720
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
吉田 千春 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60360666)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 表皮細胞 / マウス / EB細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、発生過程における神経管閉鎖時の表皮形成に着目し研究を行なってきた。特に昨年度までに、神経管閉鎖時には未分化性を持った外胚葉細胞が存在していることを明らかにし、それら未分化外胚葉性細胞が神経又は、表皮へと運命決定することが正常な神経管閉鎖に重要であることを報告した(Kimura-Yoshida et al., 2015 EBioMedicine)。 現在我々が注目しているのがCP2ドメインを持った転写因子、Grainyhead-like3 (Grhl3)遺伝子である。Grhl3遺伝子は、その遺伝子欠損マウス胚で二分脊椎を発症し、皮膚創傷治癒の遅延が見られることが報告されている。また前述した我々の研究から、未分化外胚葉から表皮への分化する際に主要な役割をすることも明らかとなっている。そこでGrhl3遺伝子をin vivoかつin vitroにおける、表皮形成の詳細な機能解析を試みた。 まず、Grhl3遺伝子の培養細胞での機能をみるため、マウスES細胞の表皮細胞分化系実験を用いて検討を行なった。ES細胞からEB細胞(Embryonic bodies; 胚葉体)を形成させ、さらに表皮誘導用の培地を用いてマトリゲル上で培養を行なうと、単層の表皮細胞が誘導される。このES細胞に、Grhl3遺伝子をトランスフェクションさせると、巨大な核を数個持ち(多核)、さらに細胞骨格が豊富なサイズの大きい表皮細胞が誘導されることがわかった。一方で、Grhl3遺伝子による表皮巨細胞の誘導に関わるシグナリングの同定には、各種シグナルに関与する活性化剤、阻害剤を加えて培養を行なうことで検討を行なった。また生体内におけるGrhl3遺伝子の機能解析には、遺伝子改変マウスを作製し、異所的にGrhl3タンパク局在をさせることによる影響を解析することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroを用いた培養実験では予定通り結果が得られている。一方、遺伝子改変マウスを作製してGRHL3タンパクの局在を変える実験では、現在キメラマウスの作製は成功している。今後、Flpeを持ったトランスジェニックマウスとの交配により、neo耐性遺伝子を無くし、より解析に適した遺伝子配列を持ったマウスの作製を試みる。これら交配が順調に行なわれれば、約3ヶ月後には生体内における機能の結果が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
GRHL3タンパクを異所的に局在させた時の生体内における機能解析を行なう。具体的な解析方法は、各一次抗体や、ISHプローブを用いた発現解析を行ない、どの時期・組織で異常が見られるか検討する。また、培養細胞の実験系で、Grhl3遺伝子過剰状態によって誘導される特異表皮細胞の特性を詳細に解析する。一方、シグナル経路との関与を検討する際には、免疫沈降法などのタンパク間相互作用も解析する予定である。最終的には、神経管閉鎖時に必要な表皮細胞の特性を明らかする。これら結果が得られ次第、論文投稿の準備を開始する。
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Causes of Carryover |
本年度は細胞培養の実験に集中して実験を行なったため、生体内における機能解析が終了出来ていない。生体内における機能解析に関しては、遺伝子改変マウスを作製、繁殖、さらに他のマウスとの交配による遺伝子相互関係の検討など行なうため、時間がかかっている。しかしながら、既に生殖系に寄与するキメラマウス作製は成功しており、来年度は交配・繁殖を進め、表現型解析までは予定通り行なえると考えている。また細胞培養を用いた実験では、生化学的な解析がレフリーに求められることが予想されるため、それらデータも準備をしておきたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度作製した遺伝子改変マウスの表現型解析を行なう。また必要に応じて、他の研究機関から遺伝子変異マウスを導入し、ダブル変異マウスの解析を行なう。それら実験と並行して生化学的な実験、具体的にはタンパク間相互作用の検討を行う。またこれらの実験結果が得られた際には、速やかに論文を作成し投稿する。
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Research Products
(7 results)