2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスが精神疾患病態生理に果たす機能的重要性の解明;うつ病の敵か、味方か?
Project/Area Number |
25461727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
戸田 重誠 金沢大学, 大学病院, 講師 (00323006)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / うつ病 / 意思決定 / 報酬系 |
Research Abstract |
平成25年度は薬理学的に一過性にマイルドな酸化ストレスを誘導する薬剤CHXを急性あるいは慢性投与し、意欲の指標となるprogressive ratio条件下での道具学習行動、習慣化の促進、逆転学習、コカインに対する反応性、および強制水泳への影響を検討した。その結果、CHXの慢性投与は道具学習行動へ影響を与えなかった。一方、強制水泳に関しては対照群に比べCHX投与群では無動性が有意に減少し、抗うつ剤様効果を示した。また、慢性CHX投与群では急性コカイン投与によって誘導される行動増強が抑制された。その一方、急性のCHXは一過性に道具学習訓練後の脱価値化を阻害したが、この効果は慢性にCHXを処置された群で遅延した。さらに各行動あるいは認知指標間の相関について検討したところ、複数の指標間で相関関係の変化が観察され、特に一部の指標では個体差のばらつきの減少、あるいはばらつきの増加が慢性CHX投与の結果として生じていることがわかった。従って、慢性CHX投与は必ずしも脳機能全体としてうつ病様表現型を模倣はしないが、脳機能全体のバランスを変化させていると考えられた(投稿中)。一般にストレスは依存症やその薬物モデルである逆耐性現象を促進することが知られている。そこで薬理学的な慢性酸化ストレス負荷がコカイン行動感作に与える影響を調べる目的にて、慢性コカイン投与の各セッション時にCHXを前投与して、その後のコカイン誘導性行動の変化を検討した。その結果、対照群では通常予想されるように、コカイン投与1回目で強い移所運動量を認める動物では、その後行動増強がむしろ形成されなくなるが、CHX投与群ではこのような動物が出現せず、全ての動物で特に強い常同行動の増強を認めた。従ってCHX前投与はコカイン逆耐性現象の形成においては個体差を減少させ、全ての動物を均一に強い習慣的常同行動の増強に導くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに幾つかの重要な知見を確認し、投稿に至った。さらに複数の追加論文発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、CHXの各行動、認知指標に対する影響について、特にカテコラミン系への影響について分子レベルで解析する。具体的にはストレスによる変化が報告されているドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン系神経終末の投射領域の変化について、各神経系に特異的なマーカーも用いて免疫組織学的に検討する。一方、コカイン誘発性行動に対する変化に関しては、常同行動との関連が強く示唆される側坐核と背側線条体、ACCにおいて同様の免疫組織学的検討を行うとともに、約20種類のシナプス構成タンパク質の変化に関してウエスタン法を用いて対処群、コカイン群、コカイン+CHX群の3群を比較し、さらにコカイン初回投与時の行動との相関を検証して、どのタンパク質が行動感作の形成(特に常同行動の増強)に重要かを決定する。
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Research Products
(5 results)