2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスが精神疾患病態生理に果たす機能的重要性の解明;うつ病の敵か、味方か?
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25461727
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
戸田 重誠 金沢大学, 大学病院, 講師 (00323006)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 成熟ラット脳 / 行動精神薬理 / うつ病 / 依存症 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの結果に、平成26年度はさらにデータを追加し、以下のような結果をまとめた。 まず、薬理学的な操作によって一過性に成熟ラット脳内に酸化ストレスを誘導することを、脳内グルタチオン(GSH)を指標にして(約20%の減少)確認した。続いてCHXの急性及び慢性投与が成熟ラットの行動や認知機能に与える影響について調べたところ、慢性CHX投与は道具学習の獲得や、それに必要なモチベーションには影響を与えなかった。一方、道具学習獲得後に、習慣化を調べる目的で脱価値化テストを行ったところ、まだ脱価値化テストに感受性を呈する状態(=習慣化していない状況)で、急性CHX投与は一過性に脱価値化テストに対する感受性を低下させた(=習慣化獲得様の表現系)。このCHXの効果は対照群では数日で正常化したが、かつてCHXを慢性投与されていた群では、回復が遅延した。このような表現系はストレス下でよく見られるため、CHXによるうつ病様表現系促進を仮定して、強制水泳実験をおこなったが、慢性CHX投与群では、対照群に比べ、抗うつ剤投与後的な反応を示し、予想と異なってうつ病様表現系に対する抵抗性を示した。同様に、一般にストレス交差性に増強する精神刺激薬(コカイン)に対する反応性も、慢性CHX投与群では対照群に比べ低下していた。各行動・認知指標によるクラスター解析では、ドパミン機能と関連の強い項目で、CHXの影響が強いことが示唆された。以上の結果より、CHXによるマイルドな酸化ストレスの誘導は、必ずしも特定の精神病様状態を模倣するわけではなく、おそらくは脳の部位ごとに異なった反応を示すことによるmixされた複雑な表現系を示すと考えられた。以上の結果について幾つかの学会で発表した他、Plos Oneに投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに主な目標であった慢性的なマイルド酸化ストレスが成熟ラットの認知行動に与える影響について、IF4の英文誌に発表した。その後得られた追加のデータに関して、最終年度にさらに2報以上の論文投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備実験から、マイルドな酸化ストレスを一過性に脳内に誘導する薬物CHXをコカイン投与前に前処置しておくと、コカインによって誘導される依存性行動がさらに増強することがわかった。この時、ラット脳内ではVMAT2には変化がないものの、ドパミン輸送体のタンパク量が増加していることが判明した。この事実はCHX+コカイン投与動物では、ドパミン輸送体をブロックした際、より多くのドパミンが遊離する可能性を示唆する。そこでメタンフェタインによる神経細胞死もより強く誘導されると考え、現在アポットーシス検出の免疫組織学的検討を行っている。また、他施設と共同で、ドパミン放出量が実際に変化しているか、検討予定である。さらに酸化ストレスが脳内タンパク質を修飾、機能変化させているかをin vivoで観察する目的にて、in situ detection of protein s-glutathionylation法の確立を目指している。これまでの予備検討では、脳内では血管内皮細胞に強いシグナルが確認されることから、血管径の調整に重要なNO合成酵素がグルタチオン化の修飾を受け、結果として血管径の拡大が阻害されている可能性が浮上している。今年度はそれについてさらに詳細な検討を加え、同法の確立および酸化ストレスの脳内でのメインターゲットの同定を目指す予定である。
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Research Products
(3 results)