2013 Fiscal Year Research-status Report
転写因子MATH2およびその下流遺伝子Prg1を介したうつ病治癒メカニズムの解明
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25461744
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
山田 美佐 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 科研費研究員 (10384182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 顕宜 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (00366832)
橋本 富男 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 流動研究員 (10610751)
山田 光彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 部長 (60240040)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗うつ薬 / 転写因子 / 情動行動調節 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに、転写因子MATH2が制御する下流遺伝子としてPlasticity related gene 1 (Prg1)を同定した。また、抗うつ薬作用のメカニズムにMATH2-Prg1を介した脳内機能変化が関与する可能性を示唆した。しかし、これまでのところ、Prg1の機能はほとんど明らかとなっていない。そこで、本年度は、うつ病の治癒機転の1つとして考えられている神経可塑的変化における機能、およびマウスの情動行動における機能を検討した。 はじめに、神経幹細胞を調製し、神経細胞に分化誘導した細胞におけるPrg1発現を検討した結果、分化誘導に伴い増加することが明らかとなった。そこで、細胞にPrg1 siRNAをトランスフェクションし神経細胞の生存率を検討した結果、有意に減少した。この減少は、このsiRNAの標的にならないPrg1-4Sを共発現させるにより消失した。一方、siRNAの標的にならず、かつ、253番目のアミノ酸をヒスチジンからアラニンに置換したPrg1-4S-H253Aを共発現させても、消失は認められなかった。Prg1の253番目のヒスチジンは脂質の脱リン酸化活性に重要であるという報告があることから、神経細胞の生存維持作用にPrg1の脱リン酸化活性が関与することが示唆された。 また、マウスの情動行動における機能については、Prg1発現をsiRNAトランスフェクションにより抑制した動物を用いて、情動行動テストバッテリーを行うことにより評価する計画を立てた。しかし、Prg1 siRNAにより発現低下が認められたものの、情動行動に対する効果が見られなかった。これは、Prg1の脱リン酸化基質として報告されているリゾホスファチジン酸(LPA)が、障害時には増加するが正常時には低濃度の維持されているためであると考え、LPAによる情動行動変化を明らかとした上でPrg1 siRNAの効果を調べることとし、現在、進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の初年度である本年度は、Prg1 発現を効率よく抑制するPrg1 siRNAを選択、評価し、また、Prg1 siRNAのトランスフェクションにより発現を抑制したときの情動行動に及ぼす影響を評価するという計画を立てた。 はじめに、3種類のsiRNAの中から効率よくPrg1発現を抑制するsiRNAを選択することができた。また、選択したPrg1 siRNAを用いて、うつ病の治癒機転の1つとして考えられている神経可塑的変化(神経細胞の生存維持)における機能について明らかにした。さらに、Prg1の生存維持機能における活性部位も明らかにした。本研究成果は欧文誌に掲載され、本研究項目に関しては予想以上に進行した。 次のマウスの情動行動における機能については、Prg1 siRNAのトランスフェクションにより発現抑制は確認できたものの、情動行動変化については当初の予想の通りに検出できなかった。その理由について、過去の報告等を踏まえ研究のステップを修正した上で、現在、進行中である。修正した研究のステップは、Prg1の基質と報告されているLPA単独の効果とLPA、Prg1 siRNA併用を比較するものであり、時間的に大きく遅れることなく、おおむね順調に進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Prg1の脱リン酸化活性の基質として報告されているLPAの情動行動変化と脳内作用部位を明らかとした上で、LPA対するPrg1の効果を検討する。具体的には、はじめに、LPAの脳室内投与を行い、情動行動テストバッテリー:明暗箱試験(不安様行動)、ホールボード試験(活動量、不安様行動)、新規環境摂餌行動抑制試験(抑うつ様・不安様行動)、強制水泳試験(抑うつ様行動)、恐怖条件付け試験(文脈記憶、不安・抑うつ様行動)を行い、LPAによる情動行動変化を明らかにする。次に、LPAの局所投与による情動行動変化を調べることにより、LPAの脳内作用部位を明らかにする。 LPAの情動行動変化と作用部位を明らかとした上で、LPA対するPrg1の効果を検討する。具体的には、LPAとPrg1 siRNAを局所投与し、情動行動テストバッテリーを行う。また、試験後の脳を用いてPrg1の発現抑制を確認する。さらに、情動行動調節のメカニズムを明らかにするため、マイクロダイアリシス法を用いて、覚醒下、シナプス間隙のグルタミン酸濃度の測定を行う。
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[Journal Article] Plasticity-related gene 1 is important for survival of neurons derived from rat neural stem cells.2013
Author(s)
Hashimoto, T., Yamada, M., Iwai, T., Saitoh, A., Hashinoto, E., Ukai, W., Saito, T. and Yamada, M.
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Journal Title
J. Neurosci. Res.
Volume: 91
Pages: 1402-1407
DOI
Peer Reviewed
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