2013 Fiscal Year Research-status Report
創造性が高齢者の脳機能に及ぼす影響-脳波の非線形解析を用いた統合的研究-
Project/Area Number |
25461754
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
上野 幹二 福井大学, 医学部, 助教 (50600152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 哲也 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (00377459)
水上 喜美子 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (00387408)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 創造性 / 高齢者 / 脳波の非線形解析 / マルチスケールエントロピー / 脳内ネットワーク / VBM |
Research Abstract |
平成25年度は、まず創造的活動を意欲的に行っている健常高齢者を対象に、創造性(S-A創造性検査C版)、知的機能(WAIS-III短縮版)、心理・社会的背景、身体機能の評価を行った。さらに、脳波計測および脳MRI撮像を行い、脳波解析および脳構造解析を行った。 脳波解析では、脳内神経ネットワークの評価を可能にするマルチスケールエントロピー解析(MSE解析)を用いた非線形的アプローチによる脳波の複雑性解析を行った。脳構造解析では、Voxel Based Morphometry(VBM)を用いた脳灰白質の量的変化を評価した。 その結果、脳機能解析からは、脳の一部において創造性の高さと脳波の複雑性を示すサンプルエントロピー値との間に正の相関がみられた。またVBMを用いた脳構造解析では、創造性の高さと脳構造との間に関連は認められなかった。我々が行っていた先行研究では、脳構造学的には創造性の高さが左海馬傍回の体積の増加と関連する可能性が示唆されていたが、高齢者の対象をさらに増やし再評価した結果、今回の結果となった。一方、知能指数と脳波の複雑性および脳構造との間には、ともに有意な相関は認められなかった。 これらの脳波解析と脳構造解析から得られた結果と創造性の高さや知能指数との関連性について、既存の文献と照らし合わせて考察した上で、高齢者の創造性の高さが脳機能に与える影響について脳内ネットワークの観点から検討した。また、創造性が高齢者の脳機能に及ぼす影響を評価する上で、本研究で我々が用いたMSE解析が極めて有用であることも改めて浮き彫りにすることができた。これらの結果をまとめ、現在、海外雑誌に投稿しているところである。 さらに健常高齢者および30歳以下の若年者を対象に、創造性、知的機能、心理・社会的背景、身体機能の評価を行うとともに、脳波計測を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常高齢者における創造性が脳機能に及ぼす影響について、脳内ネットワークの観点から解明するための基盤を作ることができた。さらに若年者での研究も開始しており、本年度以降の研究がスムーズに行えるような準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
30歳以下の若年者を対象とした創造性、知的機能、心理・社会的背景、身体機能の評価および脳波計測をさらに進めるとともに、MSE解析を用いた脳波解析を行う。さらに、創造性の高さと脳機能との関連を脳内ネットワークの観点から、高齢者と若年者とにおいて比較検討することで、創造性が生来的に備わった特性か創造的活動を通して後天的に獲得できるものなのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度から開始している若年者での研究が現在も進行中であることから、次年度使用額が生じてしまった。 評価を行うための被験者に対する交通費を含む謝金、データ入力などの研究協力者への謝金として活用し、研究全体を円滑および効率よく進めることを計画する。さらに、国内外学会における情報収集あるいは成果発表に伴う旅費、論文発表に伴う経費(論文掲載料、校正料など)として活用することを計画する。
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