2014 Fiscal Year Research-status Report
創造性が高齢者の脳機能に及ぼす影響-脳波の非線形解析を用いた統合的研究-
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25461754
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
上野 幹二 福井大学, 医学部, 助教 (50600152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 哲也 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (00377459)
水上 喜美子 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (00387408)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 創造性 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高齢者における創造性が脳生理機能に与える影響を、脳波のMSE解析を用いて脳内ネットワークの観点から評価することで、健常高齢者における創造性の神経生理学的基盤を解明することである。 創造性指標とMSE値の関連を検討するため、MSE値に対して共分散分析を行った。さらに創造性指標とMSE値の関連をさらに詳しく検討するため、高いスケールファクター(低周波数帯域)におけるMSE値の平均値と創造性指標間におけるピアソンの積率相関係数を算出した。共分散分析の結果、創造性の高い群では、前頭部、中心部、頭頂部および側頭部における低周波数帯域でのMSE値が高値を示した。相関解析の結果、前頭部、中心部、頭頂部および側頭部において、創造性指標と低周波数帯域におけるMSE値の間に正の相関関係がみられた。一方、知能指数と脳波の複雑性との間には、有意な関連性は認められなかった。以上より、高齢者における創造性の神経生理的基盤として、低周波数帯域における脳波の複雑性の増加が関連することを明らかにした。一般的に低周波数帯域における脳波活動は、広汎な脳内ネットワークの活性化と関連するとされている。従って、高い創造性は、広汎な脳内ネットワーク活動の活性化と関連している可能性が考えられる。一方、近年注目されている仮説“加齢に伴う生理学的情報の複雑性の低下”が、多くの文献によって支持されている。高い創造性に伴う脳波の複雑性の増加は、加齢を防ぐ効果をもたらし、引いては老年期精神疾患の予防に繋がっているのかもしれない。また、本研究で用いたMSE解析は、既存の非線形解析法では困難であった幅広い脳内ネットワーク機構の理解を可能にすることから、健常高齢者における創造性の神経生理学基盤をより詳細に解明できる可能性が示唆された。 これらの結果を既存の文献と照らし合わせて考察し詳細にまとめた上、海外雑誌に投稿しアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常高齢者における創造性が脳機能に及ぼす影響について、脳内ネットワークの観点から解明し、海外雑誌にアクセプトされた。さらに30歳以下の若年者を対象とした研究も継続しており、本年度の研究がスムーズに行える準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
30歳以下の若年者を対象とした研究をさらに進め、創造性の高さと脳機能との関連を脳内ネットワークの観点から、高齢者と若年者とにおいて比較検討することで、創造性が生来的に備わった特性か創造的活動を通して後天的に獲得できるものなのかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
若年者での研究が現在も進行中であることから、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析をさらに進めるため、データ入力などの研究協力者への謝金として活用し、研究全体を円滑および効率よく進めることを計画する。さらに、国内外学会における情報収集あるいは成果発表に伴う旅費、論文発表に伴う経費(論文掲載料、校正料など)として活用することを計画する。
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Research Products
(1 results)