2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会経験依存的に発達する前頭前野の興奮性神経回路は治療の手がかりとなるか
Project/Area Number |
25461778
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
芳野 浩樹 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10347560)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 前頭前野 / 発達 / h-current / 錐体細胞 / 社会的経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度においてhyperpolarization-activated cation current(h-current)を測定して基準値を定めることにより、マウス内側前頭前野第五層の錐体細胞を二つの群に分けることが可能となった。h-currentの大きい錐体細胞において、より興奮性が高く、興奮性の入力もより多いことが明らかとなった。これを踏まえて、社会的隔離の影響がどちらの錐体細胞群に現れるかを調べた。隔離飼育によって変化していたあらゆる面において、つまり自発性興奮性後シナプス電流の頻度、微小興奮性後シナプス電流の頻度、活動電位の発火閾値、活動電位の発火頻度、刺激誘導性興奮性後シナプス電流の刺激強度による増加度、刺激誘導性後シナプス電流におけるAMPA/NMDA成分の割合の変化はすべて、h-currentの大きい錐体細胞においてのみ観察されることが明らかとなった。h-currentの大きい錐体細胞がその軸索を視床などの皮質下まで投射していることから、前の研究でみられた隔離飼育後の内側前頭前野第五層における低髄鞘化は、一つの可能性として、h-currentの大きい錐体細胞の興奮性低下に引き続いて生じていることが考えられた。また、視床などとの皮質下をつなぐ回路は、前頭葉機能にとって非常に重要であることがわかっており、今回認めたh-currentの大きい錐体細胞の興奮性の低下は、隔離飼育による前頭葉機能障害の基盤となっている可能性が考えられた。内側前頭前野でみられる隔離飼育によるこれらの変化は、隔離飼育の時期を後半にずらしても消失し、また、同じ時期の隔離飼育でも体性感覚野では変化が観察されないことから、場所的に内側前頭前野特異的であり、離乳後二週間の時期が非常に重要であることがわかった。
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