2015 Fiscal Year Annual Research Report
4種類の酸化鉄ナノ粒子を用いた抗癌剤の結合と腫瘍への集積の検討
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25461813
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
渡邉 尚武 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (60570364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 哲久 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40324587)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化鉄ナノ粒子 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度作成した表面電荷をマイナスチャージしたサイズの異なる32nm、55nmの2種類の酸化鉄ナノ粒子各々にプラチナ製剤であるシスプラチンを1時間、24時間反応させた検体4種を静注したウサギ肝VX2腫瘍モデルから摘出した肝腫瘍の病理標本の鉄染色(ベルリンブルー染色)を施行。200倍1視野における鉄陽性面積をランダムに選んだ3視野の平均を算出し各検体毎に腫瘍内に蓄積した鉄陽性面積を比較した結果、各粒子間の鉄要請面積に明らかな差は認められなかった。これは各腫瘍の内部壊死や変性の程度が異なる為、鉄陽性面積での正確な評価は困難であるためと考えられた。また各酸化鉄ナノ粒子結合体をVX2細胞の培養細胞に作用させてMTT asseyを行い抗腫瘍効果の検討を行った。反応時間による毒性の差は認められなかったが、32nmの粒子と反応させた結合体の方が55nmの結合体と比較して強い毒性が認められた。前回までの研究と併せて考察すると、今回使用した酸化鉄ナノ粒子は従来のSPIOやUSPIOと比較してシスプラチンと結合しやすく、また粒子径での比較では32nmの粒子のほうが55nmの粒子よりkupffer細胞などの細網内皮系に補足されにくいことから長期間組織内に停滞することがわかった。プラチナ濃度も32nmの粒子の方が多く組織内に認められたが腫瘍と正常肝組織間の鉄濃度はいずれの粒子も腫瘍が高値を示したがプラチナ濃度は正常肝組織で高値を示した。この差は体内に投与された後の酸化鉄ナノ粒子からのプラチナ製剤の放出の度合いや鉄とプラチナの代謝経路による差などが原因と考えられる。 結合したプラチナ製剤の体内での代謝過程や結合させる薬剤の選択、反応条件など更なる検討が必要であるが酸化鉄ナノ粒子は細網内皮系に補足され難い新たなドラッグデリバリーシステムとして有効な薬剤となる可能性が示唆される。
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