2014 Fiscal Year Research-status Report
新規画像分類法「カルタ」を利用したがん分子標的治療の効果判定ソフトウェアの開発
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25461864
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
山口 雅之 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (90450577)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 画像診断学 / MRI / 機械学習 / がん分子標的治療 / 効果判定 / 橋渡し研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「カルタ」と呼ばれる新しい機械学習法を用いて、がん分子標的薬に対する治療効果を判定する画像診断支援ソフトウェアが開発可能か検討している。開発には、治療効果の判定結果とともに数千枚の画像を教師情報としてコンピューターに入力する必要がある。画像―病理相関解析が容易かつ撮影条件が一定の、がん動物モデルのMRIデータを活用するため、本年度は、ある分子標的薬に反応するヒト膵臓癌マウスモデル、及び反応しない大腸癌マウスモデルの作製し、ダイナミック造影MRI(DCE-MRI)撮影を実施し、6000枚以上の画像をデータベース化した。この動物モデルは、治療薬が分子標的に送達したか評価できる上、生存期間の観点から治療効果を決定できる点で、本研究を遂行する上で有用と考えられた。 検討の結果、膵臓癌細胞(PANC1)や新生血管細胞にはインテグリン分子が安定して発現し、数種類のインテグリン分子標的治療薬が効果を発揮すると期待できた。なお、大腸癌細胞(HT29)ではこのインテグリン分子は発現していなかった。また、インテグリン特異的に結合する蛍光標識化合物を投与し、インビボ蛍光イメージングに成功した。今後、競合阻害実験を行うことで治療薬と標的分子の結合を非侵襲的かつ正確に評価できると期待される。また、この動物モデルは、病理学的な検討の結果、膵臓以外に肝、腹膜、リンパ節に多発転移病変が確認され、生存期間の評価も可能と考えられた。 他方、DCE-MRIでは、のべ55例のがんモデルマウスを対象に、gadolinium-DTPA造影剤を急速静注し、静注前後の数分間に1例当たり約120枚の画像を得た。高磁場MRI装置とマルチアレイコイルを用い、T1強調コントラストが得られる撮像条件を用いた。現在、これらの画像をコンピューターに入力し、「カルタ」解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に有益と考えられる動物腫瘍モデルを確立した。また、MRIや蛍光イメージングを利用して、腫瘍の血液還流や標的分子発現を評価する手法も確立した。 他方、画像診断支援ソフトウェアの開発では、CARTA法によって増殖が活発な細胞から構成される組織と、不活発な細胞からなる組織を撮影したMRIを高精度に分類できることを明らかにし、当該学会において成果発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、先ず、癌モデルマウスに対し、インテグリン分子標的治療とDCE-MRI撮影を実施する。生存期間の差から反応群と非反応群に分け教師情報として利用する。両群のDCE-MRIをコンピューターに入力し、「カルタ」解析を実施し、反応群のMRIと非反応群のMRIに分別する分類器(classifier)を作成する。このclassifierの分類精度をleave-one-out cross validation testを使い評価したり、画像診断の専門家の分類結果と比較することを通じて、分子標的治療の効果判定に有益な画像診断支援ソフトウェアとして有益か調査する。 インテグリン分子標的薬をはじめ、幾つかの分子標的抗がん剤は、がん病変の血液灌流を改変し、治療効果を発揮することが知られており、血液還流に着目したDCE-MRIによる画像診断は合理的と考えられる。カルタ法では、癌病変における血液還流の改変に関連の深い画像特徴を見出すことを目指す。また、この画像特徴をclassifierとして利用し、臨床の癌DCE-MRI診断支援に役立てることを視野に開発を進める。
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Causes of Carryover |
機械学習に使用予定のワークステーションの購入を先送りしたため。また、国際学会における成果発表を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大量の画像データを蓄積、処理するためのワークステーションを次年度早期に購入し、研究を促進する。
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Research Products
(3 results)