2014 Fiscal Year Research-status Report
大量放射線被ばくに対する混合臍帯血移植治療の確立と作用機序解明
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25461868
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊藤 巧一 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (90398579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 学 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10436016)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線被ばく / 臍帯血移植 / 組織適合性抗原 / 造血幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は核施設従事者が全身大量放射線被ばくした場合に対応できる混合臍帯血移植法の実用化を目指した基礎研究である。今後長期間を要する廃炉計画等を遂行する上で、この医療法を確立することは重要な課題である。臍帯血移植は多くの免疫学的利点も持つ移植法であるが「一人の妊婦から得られる臍帯血のみでは一人の患者の需要を満たせない」という弱点がある。この弱点を補う方法として複数の臍帯血を混ぜ合わせて使用する混合臍帯血移植がある。この移植法の検証はこれまで動物モデルが確立されていなかったため具体的な効果が明らかでなく、理論が先行する状況であった。本研究ではマウスモデルを用いて全身大量放射線被ばくに対する混合臍帯血移植の有効性を検証した。この2年間の実績として、(1)混合臍帯血移植は致死量放射線暴露に対しても救命効果を発揮できること、(2)移植した2種類の臍帯血のうち、組織適合性抗原が一致した側のものが優先的に造血機能回復に携わること、(3)この移植で再構築された血液細胞(免疫細胞)が正常な機能を有していることが明らかとなった。純系マウスモデルを用いたことで、この免疫法のこれまで想像できなかった様々な免疫学的特性が明らかになりつつある。これまでの結果からも全身大量放射線暴露個体に対する混合臍帯血移植の有効性が窺える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス混合臍帯血移植モデルから、(1)致死量に相当する放射線暴露にも救命効果を発揮したこと、(2)移植により再構築した血液細胞(免疫細胞)が正常な免疫機能を有していることが明確になり、この移植の最大の目的である治療としての有効性が明らかとなった。したがって、本研究の達成度はおおむね順調と言える(ここまでの成果に関して論文作成中)。残る課題として、造血機能回復に至る過程で繰り広げられる混合臍帯血移植の特性に関するメカニズムの解明がある。
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Strategy for Future Research Activity |
混合臍帯血移植の全身大量放射線暴露個体に対する臨床的有効性はほぼ間違いないと考えられる。残り1年での研究目標として、(1)なぜ混合移植したうち、組織適合性抗原が一致した臍帯血が優先的に造血機能再構築に関わるのか、(2)造血機能再構築に関われなかったもう一方の臍帯血の役割は何か、この2点について検証する。(1)に関しては放射線暴露個体に存在する骨髄T細胞がこの調節に関与することがこれまでの検証で明らかになりつつある。
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Causes of Carryover |
研究進捗との兼ね合いから平成26年度配分金全額を使用する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(平成27年度)に物品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)