2013 Fiscal Year Research-status Report
臨床的放射線耐性獲得機構におけるTGF-beta/EMT経路の関与
Project/Area Number |
25461871
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 正敏 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60515823)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨床的放射線耐性 (CRR) / 放射線獲得耐性 (ARR) / 放射線がん治療 / 放射線抵抗性 / 放射線分割照射 |
Research Abstract |
1日2 GyのX線分割照射を30日以上うけながら分裂増殖を続けることができる臨床的放射線耐性細胞 (CRR細胞)の形成機構解明を試みた。特に本年度は、1日2 Gy以下の分割照射から生存すると、CRR細胞ほどの抵抗性を持たないものの、親株と比べて放射線抵抗性を示す放射線獲得耐性 (ARR)に着目し、CRR細胞の樹立に必要か否か、そしてARR誘導の意義を検討した。 5種類のがん細胞株 (A172, SAS, A549, HepG2, HeLa)を用いたところ、1日1 Gy以上の分割照射に対して耐性をもつがん細胞株は見当たらなかった。そのため、0.5 Gyの分割照射に対するARR細胞 (ARR0.5)を作成し、その後にCRR細胞樹立の可否を検討した。CRR細胞の形成には至らなかったものの、親株細胞と比べて2 Gyの分割照射に対して生存していた期間が延長していたため、CRR細胞の樹立には0.5 Gy以上の分割照射線量に対するARRの誘導が必要となることが示唆された。そこで、1 Gyの分割照射に対して生存 (ARR1)が可能となるARR0.5細胞の条件を検討した。ARR1細胞を形成する為の0.5 Gy分割照射回数にはしきい値があり、さらに分割照射回数を増やすとARR1細胞の形成頻度が増加した。2 Gyの分割照射に対して、ARR1形成頻度が低いARR0.5細胞は親株と同様に細胞数が顕著に減少したが、ARR1形成頻度が高かったARR0.5細胞では細胞数の減少が見られなかった。この時、DNA二重鎖切断の指標となる53BP1フォーカス数は親株細胞と同程度であったため、分割照射回数の多いARR0.5細胞ではDNA二重鎖切断に依存する細胞死誘導機構が抑制されている可能性が示唆された。 よって、細胞死誘導機構が抑制されるARR細胞の出現がCRR形成の一因となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次年度以降の解析で必要となるCRR樹立の初期段階における分割照射条件を確立できた。最終的な目標であるCRR形成までには、さらに分割照射条件を検討する必要があるが、当初の計画通り、次年度以降には今年度確立した条件の下に標的分子の解析を進め、並行して残る分割照射条件を設定する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討結果より、CRR樹立の初期段階において、より高い線量の分割照射に対して抵抗性を示すARR誘導の条件を設定した。次年度ではまず、ARR0.5からARR1の形成に必要となる細胞の分子機構の解明を中心に行う。特に、ARR1細胞の形成に必要な分割照射の回数にしきい値があったことから、ARR0.5細胞の中で、より高い線量の分割照射に対して抵抗性を示す細胞へ形質を転換することが必要であるかについて、検討を行う。本年度の検討結果より、形質転換によって誘導される要素として、DNA二重鎖切断を効率良く修復する事、DNA二重鎖切断依存的な細胞死誘導機構の抑制が示唆されてきた。本年度はHeLaとA549細胞からARR1の樹立に成功したが、それぞれの細胞で誘導される細胞死の種類が異なっている。そのため、DNA二重鎖切断の認識から細胞死誘導機構を活性化するまでの比較的上流の因子で共通した転換が起こっている可能性がある。次年度ではこのような考察の下、DNA二重鎖切断修復関連因子、および細胞死誘導機構に関連する因子を親株とARR細胞で比較する。特に、我々がすでに報告してきたARR形質獲得時に関連する因子がCRR形成期間にどのような変化を示すのか、がん幹細胞、あるいはEMTとの関連性について検討を行う。並行してARR1細胞から1Gy以上の分割照射に対して生存可能な条件を設定し、先に探索する分子がARR1細胞よりもさらに放射線抵抗性を示す時期の変化についても、引き続き検討を行う。
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