2014 Fiscal Year Research-status Report
肝動脈化学塞栓術におけるナノミセルを用いた薬剤導入と集積方法に関する研究
Project/Area Number |
25461873
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
南 哲弥 金沢大学, 大学病院, 講師 (60436813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 聡 金沢大学, 医学系, 准教授 (30313638)
香田 渉 金沢大学, 大学病院, 講師 (30401920)
吉田 耕太郎 金沢大学, 大学病院, 医員 (30645130)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肝動脈塞栓術 |
Outline of Annual Research Achievements |
多血性腫瘍に対する化学塞栓療法においては、高濃度の抗癌剤を効率的に腫瘍内に停留させ、腫瘍内で徐放させることによって効率的な抗腫瘍効果をめざすことが重要となってくる。本研究では動物を用いて経動脈的に抗癌剤を動注する際に抗癌剤を吸着して腫瘍内に送り込むことが可能となるような王立的なドラッグデリバリー粒子の開発をめざしている。研究において主に使用する粒子は従来より用いているマイクロメートルサイズの粒子に加えてなのサイズの粒子を用いることで新生腫瘍血管の深部まで到達可能にすることに主眼を置いて粒子作成と動物への経動脈的投与の療法を同時に研究している。 動物実験については家兎血管造影を行い、マイクロカテーテルにて肝動脈を直接選択し、球状塞栓物質を動注し血管塞栓を行っている。血管造影については鼠径部の大腿動脈からのアプローチで、同一個体で複数回の塞栓術あるいは造影検査に対応可能である実験系が確率可能であった。 ナノパーティクルについてはSPIO(超常磁性体酸化鉄)粒子については抗癌剤(アントラサイクリン系のエピルビシン)との親和性のinvitroの実験を行っている。こちらについてはエピルビシン吸着可能な微粒子であるDC Beadへの親和性との比較も同時に行っている。DC Beadについてはイオン交換による電気的な結合であり、ナノ粒子よりも抗癌剤の吸着が良好であることが示された。今後はナノ粒子への吸着性能の向上をめざしさらに異種の粒子の検討も行う予定である。 さらに、血管の透過性を更新させるような物質を同時併用することで効率的に薬剤を組織内に注入することが可能となると考えたので、血管作動物質についても分担研究者とともに研究開発中であり、こちらについては家兎よりも小型のラットも用いて実験を開始中である。こちらの動物については経動脈的な実験系は未だ確立できておらず、今後の課題としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝動脈塞栓術の目的であれば家兎での実験系が確立している関係上、さらに実験を推進していくことが可能であるが、腫瘍の作成が比較的困難であることから腫瘍内への塞栓物質の取り込み状態の把握が困難であると思われた。今年度は家兎の腫瘍モデルはVX2腫瘍モデルであり、腫瘍の成長とともに腫瘍内部の変性が目立つようになるため、肝細胞癌とは異なった血行動態を示す傾向にあることがわかった。したがってこれに追加してラットの肝細胞癌モデルの活用を視野にいれつつ実験を行ってきた。これについてはラットの経動脈的選択的血管造影の実験系の確率をめざしてきたが、小型動物であることから手技が困難なことが多く、倫理的観点から動物を無駄にすることのないようにするために、実験系の確立した施設と連絡を取り情報を得ながら進めているために遅滞が生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においても家兎モデルを使用した動脈塞栓術による種々の塞栓物質における組織学的な抗癌剤の沈着状態と溶出薬剤の生体における濃度や反応を検討・評価する。新たなナノ粒子開発や粒子内への抗癌剤封入の効率的な方法の開発も同時に行う予定である。 ラットについては実験系の確立を年度初期段階の目標として掲げ、なかば以降は正常肝モデルのみならずVX2腫瘍モデルと家兎では未だ可能となっていない肝細胞癌モデルにおける薬物動態の把握と腫瘍組織内において正常肝実質よりも効率的な薬物デリバリーをめざして、粒子の大きさや、粒子の安定性向上ならびに、血管作動物質等の併用による薬剤の効率的投与方法の確立を目指していく方針である。
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Causes of Carryover |
今年度においては既存薬剤や粒子、具体的には超常磁性体酸化鉄粒子やディーシービーズ、エンボスフィアによる塞栓を家兎肝をもちいて行ったが、それに追加しての血管作動性物質や新たなナノ粒子の調査ならびに入手ができなかったこととにより実験遂行に遅滞が生じた。それに加えて、新たな微小粒子具体的には透析装置のカラム内に封入されている粒子に側鎖をつけることにより様々なイオン結合等の薬剤吸着方法を用いることができるという情報を入手し、製造メーカーと協議しつつ新たな物質の開発とサンプル入手の手続きを行っているところである。したがって、その開発後に向けて実験機材や動物の購入を抑えてしまったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の新たな物質を中心として、まずはinvitroの実験から開始し、早急に家兎への応用を行うこととしている。同時にラットの選択的肝動脈塞栓術の手技確立と肝細胞癌モデルを用いての塞栓術ならびに組織学的検討を行う予定である。 さらに新たなナノ粒子開発にあたっては薬剤吸着方法や撹拌、乳化方法も含めて見直すことによりより効率的なドラッグキャリアーの開発も同時に行っていく予定である。 さらに来年度については実験遂行にさくことが可能なスタッフも増員する予定であり、本年度ならびに次年度の使用を予定していた予算の使用には問題ないものと考えている。
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