2013 Fiscal Year Research-status Report
Graves病に対する甲状腺動脈塞栓術~第4の治療への検討~
Project/Area Number |
25461888
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 晃 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60419695)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 英樹 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305620)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 甲状腺機能亢進症 / 動脈塞栓術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、Graves 病による甲状腺機能亢進症に対する甲状腺の動脈塞栓術(TAE)の臨床応用に向け基礎実験を行うことである。甲状腺動脈塞栓術は、近年臨床例での報告が3 編あるが(文献1,2,3)、動物実験による基礎的な検討は行われておらず、一般的な治療法とはなりえていない。本研究では、大型動物(イヌ)の甲状腺に対して甲状腺動脈塞栓術を施行し、①安全性②塞栓する動脈の本数による甲状腺ホルモン値の変化③最適な塞栓物質の決定(仮説としてゼラチンスポンジを推奨)④再塞栓術の可否についての検討を行う。これらの実験から得られる知見は今後の実際の治療を支える理論的背景となると考えられる。 実験には25 頭の正常ビーグル犬を用いる。以下の各群5 頭作成する①右側前後甲状腺動脈+左前甲状腺動脈NBCA 群②右側前後甲状腺動脈+左前甲状腺動脈コイル群③右側前後甲状腺動脈+左前甲状腺動脈ゼラチンスポンジ群④右側前後甲状腺動脈+左前甲状腺動脈+左後甲状腺動脈半分ゼラチンスポンジ群⑤右側前後甲状腺動脈+左前後甲状腺動脈ゼラチンスポンジ群。各群1頭は亜急性期病理組織検査のため治療後2 週で屠殺する。それ以外のイヌについては治療3 日後、7 日後、28 日後、3 カ月後、6 カ月後に以下項目について検討する。検査項目は、採血にて甲状腺機能検査(TT3、TT4、FreeT3、FreeT4、ReverseT3、TSH、TMAb、TG、TSAb)及びCa、PTH、電解質を測定する。また画像的な検査として甲状腺のCT での体積、CT での脳梗塞の有無を撮影する。6 カ月後には再度血管造影を行い、血管の再開通を評価する。6 カ月後の病理組織も評価する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、現在、犬を使用して、犬の甲状腺に関わる動脈の解剖把握を行うこととした。犬の下甲状腺動脈は同定が困難で、選択的塞栓術が困難であることが判明した。そのため、上行頸動脈から、リピオドールを選択的に動注した後、CTを撮影することによって、上行頸動脈からの枝が甲状腺に分布していることを確認した。また、この実験では左右の甲状腺動脈を塞栓する必要があるが、その同定および、両側上甲状腺動脈への選択的カテーテル挿入に成功した。 また、犬の手技による侵襲を減らすために、鼠径部において経皮的カテーテル挿入に成功し、従来結紮していた大腿動脈を経皮的に行うことによって今後の犬の術後苦痛および、苦痛によるホルモン値の修飾も避けることができると期待している。 NBCAは試験的に使用したが、人間と異なり、非常に細径の上甲状腺動脈であることが判明、選択的な塞栓術を行う上で、内頸動脈からNBCAの逸脱が高率でおこるであろうことが判明した。また下記のとおり、科研申請時の後、平成26年2月から日本でもPVAを入手・使用することができるようになったため、PVAの効果についての検討も行うことをとし、PVAを入手、使用方法についての見識を深めた。 全体として、本実験に向かうための手技的な準備は整ったと考えられ、本実験を行う予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、科研申請時の後、平成26年2月から日本でもPVAを入手・使用することができるようになったことを考慮し、またNBCAの使用が犬においても危険を伴うことが判明している。 また、甲状腺塞栓術には新たな問題があることが近年の報告で発見された。副甲状腺機能低下症である。 共同研究者との論議の元、この実験の主たる目的は我が国において甲状腺動脈塞栓術を、NBCAを用いずに、行う環境を整え、その起こり得る効果、合併症を探求することであることから、PVAを用いた塞栓術の効果、そのホルモン的影響(甲状腺ホルモンおよび副甲状腺ホルモン)を検討することが肝要にして必須であることが考えられたことから、甲状腺の塞栓する本数による各種ホルモンの影響を精査することを第一に行うこととした。 今後は、12頭に対して、塞栓術の影響を調べることより実験を引き続き続けることとする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
甲状腺動脈の4血管は、選択可能で、順調に実験計画を遂行可能である事が確認できたが、年度末に血管造影装置が故障し、若干の期ずれが起こった。 また、若干の実験予定変更により、開始が遅れている。 実験遂行は手技的に問題がないことが確認できており、また血管造影装置も不安定ではあるが、使用可能であることが確認できたので、次年度4月より順次施行予定である。
|