2013 Fiscal Year Research-status Report
脳内レドックス状態のイメージングを目的とするPETプローブの開発
Project/Area Number |
25461895
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
岡村 敏充 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80443068)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / PET / レドックス |
Research Abstract |
生体内のレドックス状態の恒常性は様々なシステムにより維持されているが、この恒常性が破綻すると病気の発症や進行に深く関与している酸化ストレスを引き起こす。従って、生きたままのレドックス状態を評価することができれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。そこで、本研究では脳内のレドックス状態を非侵襲的に評価するためのPETプローブの開発を行った。今年度は、候補化合物として血液脳関門を通過し、脳内で酸化され、集積することが期待される二種のジヒドロピリジン系化合物と三種のジヒドロキノリン系化合物を設計し、これらの標識前駆体と標品の合成、および11C標識合成を行った。ジヒドロピリジン系の1化合物は、ヨウ化メチルやメチルトリフレートでは短時間で標識することができなかったが、残りの4化合物については通常の11C標識法のヨウ化メチルを用いたメチル化により酸化体を得ることができた。その後、アルカリ性水溶液中、亜ジチオン酸ナトリウムあるいはアセトニトリル中、1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミドを用いて還元することにより目的とする11C標識体を得ることができた。次に、マウス脳ホモジネート中における11C標識化合物の安定性を調べたところ、リン酸生理食塩水中では安定であったのに対して、脳ホモジネート中では時間の経過と共に水溶性の酸化体が増加した。また、化合物間で酸化速度に著しい差が認められ、酸化に対して安定性の異なる複数の11C標識候補化合物を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、候補化合物として血液脳関門を通過し、脳内で酸化され、集積することが期待されるジヒドロピリジン骨格あるいはジヒドロキノリン骨格を有する化合物を五種設計し、11C標識合成を行った。設計した五種の候補化合物のうち、ジヒドロピリジン系の一化合物を除く、四種の化合物について11C標識体を得ることに成功した。また、これら候補化合物はマウス脳ホモジネート中で酸化に対して異なる安定性を示した。このように、当初計画したとおり異なる酸化速度を有する11C標識候補化合物を得ることができたので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究はおおむね計画通りに進み、異なる酸化速度を有する11C標識候補化合物を得ることができた。よって、今後は、それぞれの候補化合物について、脳内レドックス状態をイメージングするために必要なプローブの条件、血液脳関門を通過することおよび酸化体が脳内に滞留することを満たすかどうかをインビボにおいて詳細に検討する。さらに、プローブは適切な酸化速度を有することが必要であり、その脳内動態から速度バランスを推定し、レドックス状態を反映するプローブであるかどうかを判断する。ここまでの実験により、候補PETプローブの有効性が認められた場合、レドクッス状態が変化した病態モデル動物を用いて、プローブの応答性を調べることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、比較的スムーズに研究が進んだので、少額の余剰金が出た。 次年度研究費は、主に物品費として、合成用の試薬や実験器具、動物試験に関わる動物投与試薬や動物などの購入を計画している。その他、学会発表、英文校正や論文投稿などに使用する予定である。
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