2014 Fiscal Year Research-status Report
脳内レドックス状態のイメージングを目的とするPETプローブの開発
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25461895
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
岡村 敏充 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (80443068)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射性医薬品 / PET / レドックス |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内のレドックス状態の恒常性は様々なシステムにより維持されているが、この恒常性の破綻は病気の発症や進行に深く関与していることが報告されている。従って、生きたままのレドックス状態を評価することができれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。前年度、代謝変換捕捉原理に基づきレドックスイメージングのための候補化合物を設計し、11Cによる標識合成に成功した。今年度は、まず、ジヒドロピリジン系化合物([11C]DHP1)およびジヒドロキノリン系化合物([11C]DHQ1)の脳移行性を検討した。その結果、静脈内投与後の[11C]DHP1の脳内放射能は低値を示したためPETプローブとしては不適当であったものの、脂溶性のより高い[11C]DHQ1については十分な脳移行性が認められた。また、脳内放射能は最大値に達した後、緩やかに減少した。次に、[11C]DHQ1投与後の脳内化学形を分析したところ、親化合物の[11C]DHQ1は消失し、脳内放射能の大分部が水溶性の酸化体となっていることが確認された。さらに、その酸化体投与後の脳取り込みを調べた結果、親化合物の[11C]DHQ1に比べ、低値を示したことから、末梢組織で生じた酸化体の脳移行性は低いことが考えられ、酸化体についても本測定原理上望ましい性質を示した。以上、今年度の研究により、[11C]DHQ1は脳への高い取り込みおよび酸化体への変換という条件を満たし、[11C]DHQ1のレドックスプローブとしての可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、前年度11Cにより標識した候補化合物がインビボにおいて望ましい挙動を示すかどうかを検証した。ジヒドロピリジン系化合物([11C]DHP1)はPETプローブとしては不適当であったが、ジヒドロキノリン系化合物([11C]DHQ1)は高い脳移行性と水溶性酸化体への変換を示し、生じた[11C]DHQ1の酸化体は完全には脳組織内に捕捉されなかったものの、その放射能の減少速度は比較的緩やかであった。このように、当初の計画通り、インビボにおいて望ましい性質を有する11C標識化合物を見出すことができたので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究はおおむね計画通りに進み、インビボにおいて望ましい性質を有する11C標識化合物([11C]DHQ1)を見出すことができた。今後は、薬物による酸化酵素活性の阻害、あるいは活性酸素の過剰生成により脳内のレドックス状態を変化させたモデル動物を用いて、[11C]DHQ1の応答性を調べることを予定している。これらの結果が良好な場合は、さらに、酸化ストレスが関与する虚血-再灌流モデル、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患モデル動物を用いて、[11C]DHQ1の応答性を調べる。
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Causes of Carryover |
今年度は、比較的スムーズに研究が進んだので、少額の余剰金が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度研究費は、主に物品費として、合成用の試薬や実験器具、動物試験に関わる動物投与試薬や動物などの購入を計画している。その他、学会発表、英文校正や論文投稿などに使用する予定である。
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