2013 Fiscal Year Research-status Report
便中のαディフェンシン測定を用いた放射線性腸炎の定量評価と臨床応用
Project/Area Number |
25461899
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野寺 俊輔 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30374458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 公則 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (80381276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線性腸炎 / αdefensin / 血中シトルリン |
Research Abstract |
我々は、放射線性腸炎を定量的に評価する方法としてαdefensinがその評価方法となる可能性について探るため本研究を行った。 (1)マウスを用いた腹部照射モデルにおけるαdefensin量と病理組織像の検討;本学において付属動物実験施設の建て替えが丁度行われたことから、本年度前半は動物実験飼育場所の確保ができず、実質的に12月から作業を開始した。マウスへは本学RIセンターにおいて飼育し、その施設内にあるLinacを用いて照射を行った。使用したマウスは、特定の遺伝子による影響を除くため、ICRマウス オスを用いた。 まず当初の予定より低い6Gyでの腹部照射を3匹に対して行ったが、6Gyでは明らかな腸炎の出現を認めず、一過性の体重減少は見られたが、αdefensinの照射群における変化は認められなかった。続いて、予定線量である8Gyで腹部照射を行った。8Gyでは照射群に一過性体重減少を認め、糞便量も一時的に減少が見られた。一部の照射個体においてαdefensinの低下と回復が認められたが、照射群と非照射群との有意な差は見られず、病理的な変化は認めなかった。合わせて採取した血中シトルリンにおいても、照射群と非照射群において有意な差は認められなかった。 (2)臨床研究;本研究計画における臨床研究への前段階として、これまで当院にて行われた骨盤臓器への放射線治療における放射線線量とその腸炎の関連について検討を行った。 本検討では30Gy以上での照射線量体積が臨床における腸炎の発生に関連していることが示唆され、この結果を第129回日本医学放射線学会北日本地方会で発表した。 臨床研究として、前向きに検討を行うため婦人科腫瘍症例を対象に放射線治療単独治療群において血中シトルリンと糞便の回収を行うことを目的とした臨床研究計画書を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学における動物実験の開始が予定より遅れ、このため動物実験の検討が不十分になっている。今回の研究で8Gyでははっきりした放射線性腸炎が観察されにくかったことも原因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらにマウスを用いた動物実験を共同研究者である中村先生の協力のもとで継続し、腹部線量もさらに増加して、放射線性腸炎がはっきりと観察される線量におけるαdefensinの経時変化を検討する。また、臨床研究においても、代表者が異動となった先において改めて臨床研究計画書を提出し、症例の蓄積と試料の解析を行っていく。 また、陽子線治療と通常の放射線治療における比較については、北海道大学病院 分子追跡放射線医療寄附研究部門・技術補助員である吉村高明先生に研究協力者となっていただいており、吉村先生に通常の放射線治療と陽子線治療における線量分布における有意性について検討を進めていただき、照射線量の違いから陽子線治療の腹部照射における有用性について明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス実験における進捗が、予定の半分程度であり、今年度においてさらにマウス実験を繰り返す予定である。このため、本年度使用予定額より支出が低下し、次年度使用額となっている。特に大きいのが、腸内細菌叢の検討であり、これは腸炎とαdefensinの関連が明確に見られた試料において実施する予定であり、その測定に係る検査料金が未使用となっていることが今年度未使用額が大きくなった理由である。また、臨床研究においても、臨床症例が実質的に次年度から集積を開始することから、本年度における臨床実験における検査や器材使用がなく、次年度に繰り越すこととなっている。 次年度においてさらにマウス実験を行うため、マウス個体購入や飼育施設使用料の支払いに本年度未使用額(30万程度)を使用する。また、マウス実験において、放射線性腸炎が明瞭に見られた試料について腸内細菌叢の検討も合わせて行う予定である。臨床症例でも放射線性腸炎の出現前と出現後における腸内細菌叢の変化について検討を行う予定である。このため、これらの検査料として100万程度の支出が見込まれる。 また、臨床研究においても次年度では実際の症例における血中シトルリンの測定を頻回に行うため、この検査料で50万程度の支出が見込まれる。
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