2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を用いた高精細格子状照射による腫瘍および正常組織の生物学的効果の基礎的研究
Project/Area Number |
25461915
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 英輝 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80444610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
吉田 賢史 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80351906)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Spring-8 / 格子状照射 / マイクロビーム / 放射線治療 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
高輝度放射光設備(SPring-8)から供給される放射光を用いて高精細格子状照射(synchrotron microbeam radiation therapy: SMRT)を行い、難治悪性腫瘍に対する新たな治療戦略開発のための基礎研究を行った。SMRTとは、従来の放射線治療のようにターゲットに対して均一な照射を行わず、ターゲット内を格子状に照射を行う照射法である。これまでの研究で、SPring-8のBL28B2ビームラインから取り出した放射光X線を用いて8週齢オスのC57BL/6JJclマウスに対し、全脳照射とスリット照射を行った。スリット照射では、ビーム幅25μm、ビーム間隔200μmのマイクロビームを照射した。ビーム幅25μm、ビーム間隔200μmスリット照射群の半致死線量(LD50/90)は約500Gyであり、ビーム間隔100μm群、300μm群ではそれぞれ180Gy、700Gyであった。組織学的評価では照射部位に一致したスリット状の核の脱落がみられたが、異常行動等はみられておらず機能学的な異常はなかった。 平成27年度の実験では、ビーム間隔を100μm、200μm、300μmとしファントムおよびマウスへの照射を行った。照射線量のピークと谷の線量比はビーム間隔100μm、200μm、300μmでそれぞれ、19、38、60であった。マウスへの照射では、50%致死線量となるピーク線量はそれぞれ、244、533、792Gyであった。一方、50%致死線量となる谷線量はそれぞれ13、14、13Gyであった。これらの結果からは、スリット照射を行った際の正常脳の耐用線量はピーク部の線量よりも、谷線量に依存する可能性が示唆された。 これらの研究成果から、SMRTにより従来の照射より高線量での照射が可能と考えられ、SMRTにおける耐用線量の推定には谷線量の評価が重要であることが示された。
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