2014 Fiscal Year Research-status Report
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25461933
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
高井 伸彦 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (70373389)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳腫瘍治療 / 放射線治療 / 認知機能 / QOL / 毛細血管密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
注意力の欠如を含む認知機能の障害は、頭蓋内に発生した腫瘍体積の増大によって引き起される高次脳機能障害のひとつであるが、脳腫瘍の外科的手術、放射線や抗がん剤治療を実施した長期生存者において、脳壊死に附随して頻繁に出現する副作用のひとつでもある。そのため、脳壊死や高次脳機能障害をいかにして低く抑え、治療後のQOLの低下を防ぐことが今後の脳腫瘍治療の課題とされている。 脳の毛細血管密度を指標とした新しい画像分析法を用いることで、従来数ヶ月から数年かからなければ判らなかったことが、1週間程度の短い時期に診断が可能になったこと、またそれを用いることで、放射線に脆弱な部位とそのメカニズムを明らかにしたことが高く評価され、9月14日からギリシャ・ロドス島で行なわれた41st Annual Meeting of the European Radiation Research Society(ERR2014)において「放射線による脳腫瘍治療時に生じる高次脳機能障害のメカニズム:The effects on the cognitive function and astrocytic activation in the hippocampus after local brain irradiation with carbon ions using mice」について発表し、国際学会賞(Best Poster Award賞)を受賞した。この研究成果は、治療後のQOLの低下を防ぐための薬剤開発や、放射線照射による脳壊死のメカニズムを探る新しいツールとなると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度までに、脳の放射線影響による認知機能障害に関わる生物学的指標を様々な手法を使って明らかにすることを第一目標としていたが、脳毛細血管密度を指標とした画像解析を用いることで、脳腫瘍放射線治療に伴う壊死のメカニズムについて明らかにすることができた。平成27年度においては、脳毛細血管密度の生物学的指標が、認知機能障害と関連性が認められない場合に、PETおよびSPECTに応用可能な脳内神経受容体の結合動態解析を行うことを当初予定していたが、平成27年度は脳内毛細血管密度を主たる解析法として、その定量性の確認を行い新たな診断法の樹立に向けた研究を実施することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに確立した脳毛細血管密度の画像診断法を用いることで、脳腫瘍放射線治療に伴う認知機能障害のメカニズムの解析が、1週間以内に解析できることを明らかにした(従来数ヶ月から数年を要していた)。脳腫瘍は、最新の陽子や炭素線などによる重粒子線治療によっても、正常組織の壊死および認知機能障害が治療の妨げとなっており、5年生存率の向上が認められていない。そのため、化学療法との併用も行われることが示唆されている。化学療法はそれ自身によっても認知機能障害を引き起こすことが報告されており、放射線療法と化学療法の併用は、さらなる困難が推測される。これまでの研究成果を用いることで、放射線療法と化学療法との併用時の解析が可能になる。今年度でこの研究課題は終了するが、新たな研究課題として、脳腫瘍における放射線療法と化学療法の併用時における認知機能の低下を防ぐ研究を実施する予定である。
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