2013 Fiscal Year Research-status Report
臨床膵島移植の成績を改善するための次世代ストラテジーを用いた包括的研究
Project/Area Number |
25461946
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川本 弘一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (30432470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
濱 直樹 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00645723)
永野 浩昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294050)
小林 省吾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30452436)
秋田 裕史 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (70528463)
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90542118)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 膵島移植 / 幹細胞 / 共移植 / 糖尿病 |
Research Abstract |
糖尿病は様々な原因で血糖値が病的に高値を示す疾患である。厚生労働省発表によると、日本国内で患者は820万人と推計されている。1型糖尿病は、自己免疫反応によるβ細胞傷害のためインスリン分泌が絶対的に不足している病態であり、インスリン強化療法による治療が主体となる。しかしインスリン強化療法をもってしても網膜症、神経症、腎症等の合併症進展を抑制しえず、血糖コントロールも困難を極め、無症候性低血糖発作を来たすなど、患者の生活の質や生命予後を損なってしまう。したがって、β細胞代替療法の確立が望まれている。本研究では、臨床膵島移植の成績を改善可能な幹細胞分画の同定を目標に本研究計画を立案した。 まず、今年度は、基礎的研究として、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose-derived mesenchymal stem cell; ADSC)と膵島共移植の成績を改善可能なADSC亜分画を同定するための新規ツールとして、リプログラミング効率に着目した(研究発表参)。すなわち、マウスADSCにおいてCD90に着目し、CD90highADSVとCD90LoADSCを、セルソーターを用いて分離し、山中4因子を導入、アルカリフォスファターゼ染色を用いて解析したところ、前者が有意差を持ってリプログラミング効率が高いことが示されたのである。これより、リプログラミング効率を解析することで、移植医療に適した幹細胞の選択が可能となった。 また、本件研究では、ADSCと膵島の共移植の臨床応用を目標としている。本年度は、当院における臨床膵島移植を実際に経験した。症例は遺伝性膵炎で膵炎発作を繰り返す患者であった。今後、1型糖尿病患者に対する同種膵島移植をすすめ、同時に共移植の基礎的研究を踏まえて、膵島移植成績を改善する方法の確立を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成度においては、当初の計画以上に進展したと判断している。その根拠として、まず、基礎的動物実験において、脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)と同種膵島移植の共移植の成績を改善しうる方法を構築するためのツールを確立したことが挙げられる。すわなち、マウスADSCにおいて、レンチウイルスベターを用いて山中4因子を導入、5日目にマイトマイシン処理したマウス胎児線維芽細胞に移し、30日前後で、アルカリフォスファターゼ染色を用いて解析したところ、実際に、マウスADSCはリプログラミング可能であった。またCD90highADSCがリプログラミング効率に優れることを証明した。このことは、今後リプログラミング効率を指標として、新規マーカーをスクリーニング可能であることを示唆している。同時に、リプログラミングした細胞を共移植に用いることで十分な細胞量を準備可能となる。また、臨床面においては、臨床膵島移植を成功裏に実施した。当院は膵島分離、移植、凍結保存可能な認定施設であり、さらにその中でも、文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラム、厚生労働科研の医療技術実用化総合研究事業認定6施設のうちの1つで、臨床膵島移植を実施可能な体制は整備されている。また、本学では、パッケージ型インフラ輸出を活用して、新規再生医療技術を、中東国家に輸出する試みが進められている。申請者は、実際の輸出国候補のカタールにおいても招請講演した(学会発表参)。今後、新規治療法を海外展開することで、さらなる研究開発費を獲得することで、本邦の国民に還元可能と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、研究目的を達成するために、2つの研究課題を中心に基礎研究を展開し、得られた研究成果を実際に臨床応用するために、ヒト膵島を用いた実験も施行する点が独創的と考えている。課題1では、新規TORC1/2阻害剤(ATP結合部位阻害剤)を用いた免疫抑制プロトコールを開発する。まずマウスを用い、有望なデータが得られれば、大動物(ブタ)での実験を追加する。課題2では、stem cellからのβ細胞誘導法を改良、得られたβ細胞と膵島を共移植することで膵島移植の成績改善を図る。さらに、ヒト膵島を用いてin vitroの研究を追加することで、研究成果の再現性と、臨床応用の可能性を検討する。このようにして得られた真に臨床応用可能なテクノロジーを実臨床へ還元すべく臨床研究を開始する。次年度は、ADSCから直接新規β様細胞誘導法の確立を目標としている。マウス・ラット等の齧歯類の皮下脂肪より通常法にて採取したADSCを使用する。in vitroで培養保存したADSCにレンチウイルスベクターを用いて膵発生に関与する転写因子(MafA, PDX-1, Ngn3等)を、個別あるいは同時に導入する(direct reprogramming)。1型糖尿病に対する臨床同種膵島移植は2013年に再開され、サイモグロブリンおよびエタネルセプトを併用した強力な導入療法が、これまでのエドモントンプロトコールからの改善点である。また、1例は本邦初の脳死ドナーからの同種膵島移植であったため、これまでの心停止ドナーからの移植成績を上回る可能性に期待が集まっている。しかし、昨年の2症例に関しては、インスリン離脱に至っていない。このことは、やはり共移植等のストラテジーが特に本邦では要求されることを示唆している。また、リプログラミングしたADSCは増殖能に優れるため、今後は、ADSCそのものを用いる場合と、リプリグラミングの手法を用いて初期化したものを用いる方法とを比較検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実験に必要なマウス、CSL Behring、DNA合成、プレート2UMER、チューブ、採血管、サンプル管、フロスト、細胞培養用ディッシュ等、実験を行うのに必要なものを全て購入する際に進捗状況に合わせ購入する努力をしたことにより、当初想定していたよりも少額の使用に抑えられ、節約できたため。 研究のさらなる成果を求めるため、動物実験と細胞を用いての実験を進め、次年度の予算と合わせて、実験に必要な消耗品の購入にあてる。
|