2014 Fiscal Year Research-status Report
HLA-Gの発現とその遺伝子型の移植片生着への影響についてー急増する報告の検証ー
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25461957
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
石谷 昭子 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (40112544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王寺 典子(下嶋典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HL-G / 可溶性HLA-G / 移植片生着 / 造血幹細胞移植 / 腎移植 / 肝移植 / ELISA / Flowcytometry |
Outline of Annual Research Achievements |
HLA-Gは本研究の海外共同研究者であるGeraghtyらにより発見された非古典的HLAクラス1遺伝子の一つで多型性が著しく乏しい。また、母児の接点である胎盤トロホブラストに発現し、母体に免疫寛容を誘導する分子と考えられていることから、近年、各種臓器移植において、移植片の生着とHLA-Gの発現が相関しており、将来これが治療に応用できるという報告が急増している。 これらの報告を検証するため、我々はこれまでに腎移植92例・肝移植77例・造血幹細胞移植48例の移植前後の各日程(移植前日、移植後1日目、以降1週間~2週間おきに、1~3カ月、以降1カ月おきに6カ月~3年間)に対し検討を行った。その結果、移植片生着の有無に関わらずFlow Cytometry(FC)では患者単核球中にHLA-G陽性細胞が検出され、また、ELISAでは患者血漿中にHLA-G抗原が検出されることを確認した。しかし、現時点で、FCで検出されたHLA-G陽性細胞上のHLA-Gや、ELISAで検出された血漿中のHLA-GをWestern Blotting (WB)で検出できておらず、我々はこれらの結果は、抗HLA-G抗体の偽陽性を検出した結果によると考えている。しかし、これらを明らかにするには正確にHLA-Gを検出できる測定系の確立が必須であると考え、特に血漿中のHLA-G抗原を正確に測定しうる系の確立を試み、本年度はこれらの検出精度の検証を中心にELISAにおけるHLA-G抗原測定系の確立を中心に行った。 その結果、血漿を含め体液中のHLA-G抗原を検出できる系を確立することができた。この新たな測定系で測定したHLA-G抗原量はWBにおいても確認することができる。 本年度、新たに肝移植22例、腎移植22例、造血幹細胞移植8例の試料を採取した。 今後、新たに確立したELISA測定系を使用して、これまでに収集した血漿サンプル、および本年度の試料について解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検体数は、肝移植22例、腎移植22例、造血幹細胞移植8例を本年度追加し、現時点で、肝移植99例、腎移植114例、造血幹細胞移植52例を採取している。 これまでのフローサイトメトリー、ELISAの解析で、HLA-Gの偽陽性を検出している可能性が強く示唆されていたので、本年度は正確にHLA-Gを検出できる測定系の確立を中心に行った。本年度は、昨年度から行っていたELISA系の確立および精度の検討を行っていたが、想定以上に時間がかかり、採取検体の解析が滞った。そのため、現在までの達成後を「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、肝移植99例、腎移植114例、造血幹細胞移植52例を採取しているが、継続して本年度も検体採取を行い、検体数を増やす。また、移植後1年以上経過した検体の検体採取を行い、検体数を増やす。採取した検体については、本年度確立した新規HLA-G抗原特異的ELISA法による末梢血中可溶性HLA-G抗原の検出を行い、データを蓄積・解析する。また、血漿中HLA-G抗原の存在と、フローサトメトリーによるHLA-G陽性細胞との関連を調べる。新規HLA-G抗原特異的ELISA法で陽性となった検体については、末梢血中のHLA-G抗原についてHLA-G抗原のタンパク分離・同定を試みる。HLA-G抗原を分離・同定できた場合には、改めて移植片生着とHLA-G発現の相関解析を行い、HLA-Gが移植医療に使用可能であるかを検証する。HLA-G抗原を分離・同定・検出できなかった場合には、HLA-G抗原特異的ELISA法でHLA-G偽陽性となる原因分子を同定し、これまでの報告でHLA-Gが陽性であると判定されるに至った原因を明らかにする一方、その分子と移植医療との関連を検討する。さらに従来のELISA法でのHLA-G検出結果と、新たに開発したELISA法でのHLA-G検出結果を比較・検討し、これまでの報告との相違点についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
物品費として購入を予定していた各種抗体を、これまでに他の目的で購入し、残存していた抗体を使用していたため、支出していなかったため、物品費が残存した。これについては、これまでにそれらをほぼ使い切ってきたため、早急に購入する必要がある。また人件費としては、研究補助員の都合で、勤務時間が短縮されたことから謝金額が予定より低い額となったため、謝金額が低くなった。そのため各種分析が遅れたため,次年度に予定以上の研究補助を依頼する予定である。さらに、研究の進行状況から判断して、今年度に予定していた各連携研究者および海外研究協力者とのデータ解析および総括の打ち合わせ会議を次年度に延期したため、そのための交通費等が残ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種抗体および実験用消耗品の購入に約80万円、実験補助員の謝金に約60万円、研究総括のための会議費とそのために研究者を呼び寄せあるいは訪問のための交通費および成果発表に約40万円、試料収集のための運搬費およびその他で約20万円の使用を計画している。
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