2013 Fiscal Year Research-status Report
マイクロアレイを用いた乳癌腋窩リンパ節転移予測法の開発
Project/Area Number |
25461981
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
直居 靖人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30646211)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 乳癌 / マイクロアレイ / 腋窩リンパ節 / 転移予測 / 多重遺伝子診断 |
Research Abstract |
1.マイクロアレイを用いることで数万個のヒト遺伝子の中から、様々な生命事象に関係する遺伝子群を同定することが可能になってきた。そこで本研究では、乳癌原発巣を対象にしたマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、「乳癌の腋窩リンパ節転移に関係する遺伝子群を同定する」ことと、「その遺伝子群を用いた正確で再現性の高い乳癌腋窩リンパ節転移予測法(多重遺伝子診断Multi-gene classifier)を開発することを目的にしている。 2.本年の実績としては、まずPublic data base: GEO より、乳癌原発巣の欧米人マイクロアレイデータを選択しダウンロードを行った。選択基準は以下の通りである。「・U133 2.0 arrayを使用している。・リンパ節転移の有無の情報が含まれる症例。・術前抗癌剤(NAC)施行症例を除く・stageIV症例を除く。・Histologyが特殊型のものを除く。・micrometastasis症例はtraining setとしては省き、validation setとして、追加検討する。・CEL fileの破損により読み込み不可のdataは削除。」 3.その結果、11施設(cohorts) 計1241人の乳癌原発巣の欧米人マイクロアレイデータとそれらに関係するリンパ節転移の有無の情報を得ることができた。11 cohortsの内容は以下の通りである(GSE2***, GSE5***, GSE6***, GSE9***, GSE1****, GSE1****, GSE1****, GSE2****, GSE2****, GSE3****, GSE3****)(*:伏字)。これらを対象に乳癌リンパ節転移に関係する網羅的遺伝子検索を施行中である。また大阪大学医学部附属病院における乳癌手術施行例の原発巣のマイクロアレイデータもvalidation setとして順次作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Public data base: GEO より、乳癌原発巣の欧米人マイクロアレイデータを選択しダウンロードを行った総計1241人の乳癌原発巣の欧米人マイクロアレイデータ全体に対して網羅的な解析を試みたものの、全体においてリンパ節転移に関係するような遺伝子群を効率よく選択することは困難であった。開発用のTraining setにおいて有意差が出ても、検証用のValidation setにおいて良好な有意差を示すことは困難であった。その原因として種々の解析を行った結果、以下のような解析困難に関係する理由1,2が考えられた。 理由1「リンパ節転移に関しても、Intrinsic subtypeごとに異なる機構を持つらしいことがわかってきた。」総計1241人に対して、Perouらが開発したsubtype分類「PAM50」を適用すると、Luminal A (468), Luminal B (319), HER2-enriched (140), Basal (248), Normal-like (66) 等に分かれ、それぞれにおいてリンパ節転移率が大きく異なった。またそれぞれのsubtypeにおいて解析を行ったところ、各々でリンパ節転移に関係するPathway(遺伝子群)の傾向が大きく異なることが判明しつつある。従って全subtypeにおいて共通してリンパ節転移に関係するような遺伝子群を効率よく選択することは困難であると考えられた。 理由2「総計1241人の乳癌原発巣のマイクロアレイデータは11病院施設(cohorts)において制作されたが、各々の施設間格差が存在することが判明した。」施設間格差は網羅的解析において大きな障壁になり、関連遺伝子群を効率よく選択することが困難になる。 以上2つの理由により、総計1241人に対して、全subtype、全病院施設に共通してリンパ節転移に関係する遺伝子群を選択することは困難であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
総計1241人、すなわち全subtypeにおいて共通してリンパ節転移に関係するような遺伝子群を効率よく選択して、リンパ節転移予測モデルを構築することは上記の理由1、2から困難であると考えられた。 従って、理由1「リンパ節転移に関しても、Intrinsic subtypeごとに異なる機構を持つらしいことがわかってきた。」に対しては、総計1241人を各subtypeに分類した上で、各々のsubtypeにおいて特徴的にリンパ節転移に関係するPathway(遺伝子群)を探索したいと考えている。またそのようにして各subtypeごとに同定されたPathway(遺伝子群)を互いに比較することで、各subtypeの特徴をリンパ節転移の面からも明らかにしたいと考えている。 理由2「総計1241人の乳癌原発巣のマイクロアレイデータは11施設(cohorts)において制作されたが、各々の施設間格差が存在することが判明した。」に対しては、数学的補正法を複数通り試すことで、その各々のデータ分布が近似して解析しやすくなる方法を試していく予定である。施設格差を解消する代表的な数学的手法に「RMA+Mean-Centering法」等があるが、そのうちいくつかの手法によって、データ分布において比較的良好に施設格差が解消され得ることを既に確認している。
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