2013 Fiscal Year Research-status Report
新規網羅的スクリーニング法によるサブタイプ別乳癌細胞における薬剤耐性遺伝子の検索
Project/Area Number |
25461997
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50348661)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 浩光 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20216261)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327543)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 抗癌剤耐性 / 固形癌 / トランスポゾン |
Research Abstract |
抗癌剤治療を継続していく上で薬剤耐性獲得が問題となるため、様々な耐性遺伝子解析法が行われているが、我々はトランスポゾンを用いたまったく新しい網羅的な薬剤耐性遺伝子のスクリーニングを行っている。 トランスポゾンは回文配列を持つ塩基配列であり、トランスポゼースがこの配列を認識してゲノムから切り出し、他の部位に挿入することで、ゲノム上の位置をランダムに移動可能である。 この回文構造の間にCMVプロモータを挿入することで、ゲノム内をランダムに移動するCMVプロモータが、その下流の遺伝子を強制的に高発現させる。これを大量の細胞に導入することにより、一つ一つの細胞がそれぞれランダムな遺伝子を高発現する系を構築することが可能となり、ラージスケールにすることで、理論上は全遺伝子を網羅することが可能である。このCMVがランダムな位置に導入された「細胞プール」へ、野生型細胞では全滅する濃度の抗癌剤を暴露すると、その薬剤の耐性化に寄与する遺伝子を高発現する細胞のみが生き残り、コロニーを複数形成する。これらよりゲノムDNAを抽出し、スプリンケレットPCR法を用いてクローニングを行うことで、最終的にCMV挿入部位を同定することで、その下流の薬剤耐性遺伝子の候補を決定することが可能である。 本手法の利点は、任意の細胞株と分子標的薬を含む任意の抗癌剤の組み合わせで、薬剤耐性遺伝子の解析が可能となる点であり、我々はこの手法を用いて「食道扁平上皮癌・シスプラチン」「Luminal乳癌・エリブリン」「HER2陽性乳癌・ラパチニブ」等、複数の組み合わせについて既に候補遺伝子の蓄積を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに次の6種類の細胞株を用いてトランスポゾンを導入した。MCF7(ER(+),HER2(-)), T47D(ER(+),HER2(+)), BT474(ER(-),HER2 (+)), SKBR3(ER(-), HER2(+)), MDA-MB468(ER(-),HER2 (-))。この中で、本年度に最も研究が進んだ細胞株と薬剤の組み合わせは、MCF7に対するエリブリン耐性遺伝子の同定である。エリブリンの添加に対して生き残り、コロニーを形成した数は約100種を超え、これらを解析した結果、約20種類の耐性遺伝子候補が同定された。現在これら候補についての各々の機能解析を行っており、さらに有用な遺伝子を絞り込む予定である。また、ER陰性かつHER2陽性の2株についても、ラパチニブに対する耐性遺伝子の候補が数多く同定され、その中にPIK3CAなどの既知の耐性に関わる遺伝子も含まれていることから、本研究で用いている実験系が正しく機能していることが確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、同定した薬剤耐性遺伝子の解析は、NEXTBIO RESEARCH社のNextBio database system (http://www.nextbio.com)を用いて行う。このデータベースは乳癌臨床試験におけるマイクロアレイデータを蓄積し、さらに各遺伝子の発現と臨床データを容易に対比することが可能である。我々はNEXTBIO RESEARCH社の研究者の協力を得て、本研究を行う上でこのデータベース使用のモニター登録を行っており、フルシステムが期間限定で使用することができる。本システムを用いて、候補遺伝子の発現と対象薬剤を用いた臨床試験の結果を対比し、膨大な遺伝子リストから有用と考えられる遺伝子の同定を行う。 さらに、同定した薬剤耐性遺伝子について、該当薬剤投与による臨床的および病理学的な腫瘍縮小効果と薬剤耐性遺伝子の発現状況の相関を評価する。主に免疫染色法を用いるが、当科では300例を超える蓄積された乳癌凍結標本ライブラリーを保有するため、これを使用することも検討する。薬剤耐性遺伝子が複数に渡る場合は、臨床病理学的因子を検討することでアルゴリズムを設定し、ノモグラムを作成することも検討する。
|
Research Products
(1 results)