2013 Fiscal Year Research-status Report
難治性消化管癌の染色体ダイナミクス解析と革新的治療法の開発
Project/Area Number |
25462024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐伯 浩司 九州大学, 大学病院, 助教 (80325448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 勝 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30294937)
北尾 洋之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30368617)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 染色体不安定性 / 食道癌 / 遺伝子プロファイル |
Research Abstract |
【方法】2000-2010年に当科にて術前無治療で手術を行った食道扁平上皮癌105例を対象とした。癌部と非癌部のDNAをそれぞれバイサルファイト処理し、パイロシークエンス法にてLINE-1のメチル化解析を行った。メチル化レベルにより対象を高メチル化群と低メチル化群とに分け、さまざまな臨床病理学的因子との関連を検討した。p53のexon2-10の遺伝子変異解析をdirect sequence法にて行った。代表的な症例を用いてSNP-CGHを行い、染色体異常を検討した。 【結果】癌部では非癌部に比してLINE-1メチル化レベルが有意に低下していた(p<0.0001)。食道の非癌部におけるメチル化レベルと喫煙、飲酒暴露量は、それぞれ有意な逆相関を認めた。癌部におけるLINE-1低メチル化群では、リンパ節転移陽性例、脈管侵襲陽性例、病期進行例、p53変異陽性例の割合が有意に高かった。高メチル化群の5年生存率が61%、低メチル化群では33%と低メチル化群で有意に予後不良であった(p=0.0026)。SNP-CGHデータから得られた染色体不安定性と低メチル化との間には有意な相関を認め、また低メチル化症例においては、p53、p16、MYC、CyclinD1、SOX2など食道癌の発生・進展に関わる複数の因子の遺伝子領域で染色体異常を認めた。 【結語】食道癌においては、ゲノム全体の低メチル化によりゲノム不安定性が生じ、癌の発生と進展の両者に関与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道癌を用いて、危険因子への暴露とglobal DNAメチル化、および染色体不安定性との関連を明らかにしており、研究はおおむね順調に進展している。食道癌において、ゲノム全体の低メチル化によりゲノム不安定性が生じ、癌の発生と進展の両者に関与している可能性があるため、今後は食道癌症例のさらなる追加、他臓器癌(胃癌、大腸癌など)においても、同様の解析を行うようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果をもとに、データベースを基にさまざまな臨床病理学的因子と対比し、さらに化学療法や放射線療法の感受性を実際の症例の治療経過をもとに解析することが可能である。これまで染色体異常と薬剤感受性の相関に関しては報告がある(Weiss MB et al. Oncogene 2010)ため、特徴的な結果が得られることが期待され、それらの結果を臨床での治療戦略構築へと応用していく。 最終的に、得られた臨床検体のデータを基に細胞株を用いた実験的検証へ展開する。例えば、コピーニュートラルLOHのメカニズムのひとつの可能性として、DNA2重鎖切断修復経路の異常が考えられる。このDNA2重鎖切断修復にはBRCA2、Rad51をはじめとして多くの因子が関わっており、その経路が巧妙に制御されることが知られている。よって、DNA2重鎖切断修復関連蛋白質の機能ドメインの解析など、感受性規定因子の分子レベルでの解析が可能である。 次のステップとしては、基礎的研究の結果を土台として治療感受性増大を目指した分子標的治療の開発を試みる。以上を総合することにより、個別化治療や治療感受性増強など、これまでにない斬新的な治療戦略が構築できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、メチル化解析に重点をおき、SNP-CGH、LOH解析など当初予定していた研究を次年度以降に持ち越したため。 当初予定していたSNP-CGH、LOH解析などを次年度に行うため、必要な試薬などを次年度繰越額1,300,000円で購入する。
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Research Products
(1 results)