2013 Fiscal Year Research-status Report
癌微小環境におけるRhoA関連蛋白質GCF2の発現制御と転移浸潤メカニズムの解析
Project/Area Number |
25462045
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大塚 英郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50451563)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深瀬 耕二 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (00578677)
元井 冬彦 東北大学, 大学病院, 講師 (30343057)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | GCF2 / 膵癌 / 上皮間葉移行 / Wntシグナル / β-catenin |
Research Abstract |
GCF2/LRRFIP1(以下、GCF2)は、Actin関連タンパク質Flightless-1と相互作用を有するとされ、細胞骨格調節因子として報告されたタンパク質である。これまでの我々の研究により、GCF2の発現を抑制することでRhoAの活性化と細胞の移動能が抑制されることや、肝転移形成に関与することが明らかとなり、GCF2は癌細胞の浸潤・転移に重要な機能を有していることが明らかとなった。浸潤・転移の過程で、癌細胞では細胞骨格や細胞間接着に劇的な変化が生じるとされ、その現象は上皮間葉転換(EMT:epithelial-mesenchymal transition)として明らかにされつつある。GCF2は細胞の骨格調節、移動能に深く関与することから、EMTの過程においても機能を有することが示唆される。 膵癌培養細胞株および切除組織標本において、GCF2とEMTマーカーの発現を検討し相関の有無を検討した。E-cadherinとGCF2の間には負の相関が認められた。さらに、SiRNAの手法でGCF2の発現を抑制した癌細胞株では、より強固な細胞間接着を獲得し、浸潤能の低下を認め、上皮系への形質変化を起こしていた。さらに、GCF2を発現抑制することでWnt canonical pathwayが抑制され、それによりβ-cateninの核内移行が阻害された。一方で、E-cadherinの細胞内ドメインでもあるβ-cateninの発現は上昇していた。 以上より、GCF2はWnt canonical pathwayのmediatorであるDishevelledとの相互作用を通じて、EMTを制御している可能性が示唆された。なかでもGCF2の発現を抑制することは、癌細胞にReversing EMTを惹起し、浸潤の阻止という点で重要な意義を有していると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載したように、癌細胞の上皮間葉転換における関与、そのメカニズムについて詳細な検討をおこなうことができた。これは、本研究の重要な目的の一つであり、現在までの達成度としても順調に経過していると考えている。さらに、膵癌臨床検体を用いた免疫組織化学染色を行い、実際の癌組織の中で、とくに先進部において発現上昇を示唆する結果を得ることができた。癌細胞の浸潤メカニズムにGCF2の発現が強く関与することを示唆する知見であった。今後さらに、癌の臨床検体をもちいた詳細な検討を行うことを予定している。 しかしながら、研究のもう一つの目標としていた、癌細胞と血管内皮細胞との相互作用におけるGCF2 の機能の解析については、現在までのところ共培養システムの確立まで至っておらず、当初の計画どおりに進んでいない。 Direct co-culture以外にdouble chamber plateをもちいたindirect co-culture法による検討も行ったが、癌細胞と血管内皮細胞との相互作用を検討するまでに至っていない。次年度以降に行うべき重要な課題と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、平成25年度に得られた知見をもとに研究を継続していく。前述のように血管内皮細胞との相互作用とその機能解析に関しては、現在のところ、血管内皮細胞と癌細胞との共培養系の確立に至っていない。今後は、血管内皮細胞のCondition mediumを用いて、その液性因子のGCF2の発現に及ぼす影響を検討など、実験方法の修正が必要と考えている。また、現在GCF2 の発現機構を解析するため、GCF2遺伝子のプロモーター領域を組み込んだレポーターベクターを設計、制作している。今後GCF2の転写調節機構の解析により、外基質など癌の微小環境下における転写調節機構をさらに詳細に行う。さらに、これまでの検討により、GCF2の発現が、癌細胞の上皮間葉移行に深く関与していることが示唆された。GCF2発現は、癌細胞にmesenchymalな形態変化をもたらすことが明らかとなった。最近海外の研究グループよりGCF2の発現が、抗癌剤の感受性に関与することを示唆することが報告された。抗癌剤等の薬剤の取り込み・排出に関与するトランスポーターの発現、局在にも影響していることが示唆されることから、今後GCF2の発現と、各種抗癌剤感受性についても検討を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)