2015 Fiscal Year Annual Research Report
EMASTを誘発するがん微小環境に着目した大腸癌悪性化機構の解明
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25462071
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
有田 通恒 東邦大学, 医学部, 助教 (80307719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / EMAST / 低酸素 / MSH3 / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム不安定性の一形式EMASTは約6割もの散発性大腸癌症例に認められ、かつ、これら症例の予後と強く相関する。そこで、大腸癌はEMAST発生条件下で悪性化すると考え、大腸癌細胞株でのEMAST発生条件の確立とその条件下で発現が変化する遺伝子の網羅的検索を試みた。今年度は、こうした検索過程で見いだした遺伝子やパスウェイについて、データベースとの比較検証や実験的な検証を行い候補遺伝子の絞り込みを行った。また、これと並行して、EMASTを示す腫瘍が高頻度で悪性化する理由を明らかとするために、EMAST発生に必要な癌細胞の遺伝的背景についても検討した。 変動倍率の閾値を2としてEMAST誘導条件下で発現が上昇した遺伝子は1912個,低下したものは2253個だった.パスウェイ解析からはEMASTに特有の遺伝子や遺伝子群を抽出できなかったが,変動倍率で上位に順位付けされた遺伝子の中に、低酸素や悪性腫瘍で報告のないものが複数(integrin α5、β4、caveolin-1、2、3、keratin associated protein 3-1)見いだされた.これら遺伝子産物のうち、特異性や検出感度の高い抗体が入手できるタンパク質を優先して大腸癌検体での発現を検討したところ、調べた症例の2例でcaveolin-1 (CAV1) の発現が検出された。発現陽性細胞自体は腫瘍細胞ではなかったものの、局在は腫瘍部であった。また、視野中の陽性細胞の頻度が極めて低かった。これらの結果は、CAV1が間質細胞による腫瘍細胞の増殖の支持に働いている可能性を示唆したが、一方で、悪性化に対する役割を明らかとするためには検討対象とする症例を選別するなどの工夫の必要性も浮上した。EMAST大腸癌の悪性化に対するCAV1の役割を知るため、腫瘍の悪性度を反映するin vitro測定系の利用を含めた評価も検討課題として残された。
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