2013 Fiscal Year Research-status Report
組織工学的手法による生体内で修復治癒する人工血管の開発
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25462168
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
西部 俊哉 東京医科大学, 医学部, 教授 (10261306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 均 東京医科大学, 医学部, 教授 (60393237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工血管 / 組織工学 / フィブロネクチン / ヘパリン / 共有結語固定 |
Research Abstract |
小口径人工血管として期待されているもののひとつとして抗血栓性の良好なePTFE人工血管がある。しかし、ePTFE人工血管は移植晩期における吻合部内膜過形成による狭窄、閉塞が問題となるが、その原因は仮性内膜形成が不良なことにある。ePTFE人工血管は小結節と微細繊維が連結されたミクロ多孔質構造となっており、平均繊維長を延長すると仮性内膜形成が良好になることが知られている。研究代表者は血性や漏水性、耐久性が低下を来さない平均繊維長の長いePTFE人工血管を開発した。 研究代表者はマトリックス蛋白のひとつであるフィブロネクチンを使用してePTFE人工血管にさらに効率よく内皮細胞に覆われた血管壁を作らせる研究を行ってきた。フィブロネクチンはA鎖とB鎖がジスルフィド結合した二重鎖の多機能接着蛋白質であり、各ドメインにフィブリン、ヘパリン、コラーゲン、細胞、増殖因子などの結合部位が有するが、逆に血小板膜糖蛋白であるGPIIb/IIIa複合体の受容体と結合し、血小板凝集を起こし血栓を形成しやすい。 ヘパリンはグリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸の一種であり、β-D-グルクロン酸あるいは α-L-イズロン酸と D-グルコサミンが 1,4 結合により重合した5000~30000Daのの高分子であり、アンチトロンビンを活性化し、抗凝血作用能の賦活を通して凝固系を抑制することにより強力な血液凝固阻止作用を発揮する。 本研究ではヘパリンとフィブロネクチンをモザイク状にePTFE繊維に結合させることにより、ePTFE人工血管において抗血栓性を損なわずに内皮細胞に覆われた血管壁を効率良く作成することを目的とする。本年度は過去の研究に照らし合わせて、ePTFEシート・人工血管に未分画ヘパリンを共有結合する条件を確立する作業を開始し、未分画ヘパリンもフィブロネクチンと同様に共有結合できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1) 基材となるePTFE (expanded polytetrafluoroethylene)シート・人工血管の供給の遅れ:当該研究では平均繊維長の長いePTFEシート・人工血管が基材として使用される予定です。市販のePTFE人工血管は平均繊維長20μm以下であったりPFE (fluorinated ethylene propylene) の膜で被覆されていたりして、仮性内膜の基盤になる血栓繊維素膜が簡単に剥離、脱落してしまうこと、外側と内側の交通性が不良であるため、細胞侵入や毛細血管の発達に乏しく繊維化、器質化が障害されてしまい、フィブロネクチンやヘパリンの効果が期待できません。 住友電気工業(大阪)と平均繊維長の長いePTFE人工血管を共同開発しましたが、同社では同材料の製造事業を終了し、ハイレックス・コーポレーション(宝塚)が継承しています。住友電気工業は同材料を人工血管として医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を得ていましたが、製造所の変更のため製品の有効性・ 安全性等の審査の再申請を行いました。同材料の原料(テフロン末、ダイキン工業)の製造に使用される添加剤が変更されたため、その残留濃度の資料の提出を求められていました。昨年度中の承認が見込まれていましたが、未だ承認が得られていません。 2) 研究棟の立て替え:当大学研究棟が耐震基準に満たないため立て替えとなり、引っ越し等で研究が数か月行うことができませんでした。フィブロネクチン、ヘパリンを共有結合するためにはメタクリル酸をePTFEに重合する必要がありますが、人体に有毒なガスを発生するため、十分な換気設備のついたフードが必要であり、研究遂行に支障を来しました。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 基材となるePTFE (expanded polytetrafluoroethylene)シート・人工血管の供給:今年度中の承認が見込まれています。承認が得られない場合は、市販のePTFEシート・人工血管で実験研究を遂行します。 2) 研究棟:研究棟は完成しており、換気設備のついたフードも使用可能と思います。十分な設備がないときは大学外の施設の使用も検討します。 以上により、実験研究の遅れを取り戻す予定です。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は1)基材となるePTFE (expanded polytetrafluoroethylene)シート・人工血管の供給の遅れ、2)研究棟の立て替えにより、実験遂行が著明に遅れが生じました。 今年度は1)基材となるePTFE、2)共有結合固定に必要な備品や薬品の購入に使用する予定です。
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