2013 Fiscal Year Research-status Report
中皮腫における胸腔内治療法の構築及び新規バイオマーカーの探索
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25462199
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
塩見 和 北里大学, 医学部, 助教 (50398682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
玉内 秀一 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (60188414)
佐藤 之俊 北里大学, 医学部, 教授 (90321637)
江島 耕二 北里大学, 医学部, 准教授 (30327324)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / バイオマーカー / 中皮腫モデル / 腫瘍マーカー |
Research Abstract |
中皮腫を極めて難治性の疾患から治療によって予後改善が期待できる疾患にするために、臨床的に解決すべき命題が2つある。一つは、中皮腫に対する有効な胸腔内局所療法の構築であり、二つ目は、中皮腫(難治性の組織型である二相型、肉腫型)に対するバイオマーカーの探索である。今回の科学研究費ではこれらの問題解決のための基礎実験を計画した。本年度は、①マウス中皮腫の胸腔内モデルの作製、②ランダム免疫法及び二次元電気泳動法を用いた、中皮腫特異的タンパク質(腫瘍マーカー)の網羅的探索実験、③中皮腫臨床検体の集積を行った。 マウス中皮腫の胸腔内及び皮下モデルの作製では、マウス中皮腫細胞株(AB12及びAE17)を購入し、皮下や胸腔内への移植、再培養を繰り返し、胸腔内に確実に生着する細胞株をクローニングした。結果、多様な実験に対応できるマウスでの中皮腫胸腔内、皮下モデルが完成した。ヒト中皮腫細胞株を免疫源とするランダム免疫法を用いて、網羅的に中皮腫に対する単クローン性抗体を作製した。ハイブリドーマのヒト中皮腫細胞株と中皮腫組織を用いたスクリーニングで最終的に6種類の抗体を選択した。今後は、これらの抗体の有用性を病理学的に詰めると同時に、その中でも有用と思われる抗体に関しては、認識する抗原を同定する予定である。二次元電気泳動法を用いた実験では、中皮腫の二相型と上皮型で発現量の異なるタンパク質(40種類)を選択した。現時点で9個のタンパク質名を決定した。最後に、臨床検体の集積においては、北里大学病院、横須賀共済病院、埼玉循環器呼吸器病センター、東京病院などから、現在までに、中皮腫15例(うち3例は疑いの段階)を集積しており、今後、二次元免疫ブロット法による患者血清中に存在する自己抗体の検出や上記実験で得られた腫瘍マーカー候補分子の病理組織学的、血清学的実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胸腔内局所療法の開発実験では、生後6~8週のメスBALB/c及びC57BL/6Jのマウスにおいて、マウス中皮腫細胞株(AB12及びAE17)を用いたマウス中皮腫胸腔内及び皮下モデルを完成させた。次の段階として、現在、ヒト非小細胞肺癌、悪性黒色腫,腎癌などで抗腫瘍効果が認められ注目されている免疫抑制性T細胞の作用を抑える抗PD-1抗体及び抗CTLA4抗体を用いた免疫療法の実験に、これらのマウスモデルが使えるかどうかを検討中である。 ランダム免疫法を用いた中皮腫に対する網羅的な単クローン性抗体の作製では、ハイブリドーマのヒト中皮腫細胞株を用いたスクリーニング過程で20種類の候補抗体にしぼり、その後ヒト中皮腫組織を用いたスクリーニングで最終的に6種類の抗体を選択した。今後は、これらの抗体の有用性を病理学的に詰めると同時に、その中でも有用と思われる抗体に関しては、認識する抗原を同定する予定である。二次元電気泳動法を用い、中皮腫の二相型と上皮型で発現の異なるタンパク質を探索する実験では、両者で発現に差のある40個のタンパク質Spotを選択し、そのうち9個は分子の同定が完了した。残りのSpotも同様に切り出し、質量分析を行い、タンパク質名を決定する予定である。中皮腫臨床検体の集積に関しては、4施設より1年間で中皮腫15例(疑いも含む)の中皮腫組織や血液を集積した。今後も症例集積を継続する予定であり、概ね実験計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2系統のマウスで中皮腫胸腔内及び皮下モデルを作製したため、今後はこのモデルを用いて胸腔内治療実験を行う予定である。具体的には、免疫制御抗体療法(抗PD-1抗体及び抗CTLA4抗体など)、NKT細胞療法、免疫細胞療法、サイトカイン療法(IL-2など)、抗癌剤及びこれらの組み合わせである。現在、皮下モデルにおいて、免疫系を活性化すると考えられる抗PD-1抗体及び抗CTLA4抗体投与に対する腫瘍の反応を観察している。また、作製した単クローン性抗体による治療の可能性も考慮する。 ランダム免疫法を用いた中皮腫に対する網羅的な単クローン抗体の作製では、選択した6種類の抗体に関して、これらの抗体の有用性を病理学的に詰めると同時に、その中でも有用と思われる抗体に関しては、認識する抗原を同定する予定である。二次元電気泳動法を用いた中皮腫の二相型と上皮型で発現の異なるタンパク質探索実験では、発現に差のある残り31個のタンパク質Spotを質量分析で同定する予定である。さらに、中皮腫組織型特異的タンパク質探索プロジェクトの一つとして、中皮腫患者血清中に存在する自己抗体の二次元免疫ブロット法による検出を開始する予定である。 中皮腫臨床検体(中皮腫組織や血液)の集積に関しては、4施設より1年間で中皮腫15例(疑いも含む)を集積した。今後も集積を継続する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に購入予定であった胸腔内免疫治療実験用の各種抗体の購入が遅れたため。 次年度(H26年度)は、初年度に続きさらに研究を進め、①マウス中皮腫胸腔内モデルを用いた種々の治療実験、②ランダム免疫法を用いた中皮腫に対する単クローン性抗体の同定、③二次元電気泳動法を用いた組織型特異的タンパク質の探索、④二次元免疫ブロット法による自己抗体の検出を開始する予定である。 そのために、各種抗体やサイトカインの購入費用、タンパク同定実験にかかわる費用(Western blot法、免疫沈降法、その他)及び、各実験に必要な各種試薬費用(二次元電気泳動法、二次元免疫ブロット法、その他)などが必要である。
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