2013 Fiscal Year Research-status Report
外傷性頭蓋内血腫除去時の二次性脳損傷に対する脳低温療法による脳保護効果の検討
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25462219
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
末廣 栄一 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10363110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 良介 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30263768)
小田 泰崇 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40397998)
小泉 博靖 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (40423389)
藤田 基 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50380001)
鈴木 倫保 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80196873)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 頭部外傷 / 脳低温療法 / 頭蓋内圧 / バイオマーカー / 積極的平温療法 |
Research Abstract |
2013年4月1日から2014年3月31日の期間に山口大学医学部附属病院へ頭部単独外傷にて救急搬送され、開頭血腫除去術を施行された患者は6例であった。搬入後は、可及的すみやかに開頭血腫除去術を行った。年齢が70歳以下であり、明らかな全身合併症を伴っていない患者に対しては脳低温療法を施行した。早期に冷却を開始し、手術中は35℃を目標とした。脳低温療法は、33℃を目標体温として最低72時間は継続した。全例に頭蓋内圧 (ICP)測定を施行し、ICPの値をみながら脳温管理を行った。転帰の評価は退院時のGalasgow Outcome Scale (GOS)を用いて行った。脳機能モニタリングとして末梢動脈血を採血し、各種biomarkerの測定を行った。採血は、受傷直後(手術前)、ICU帰室時(手術直後)、第1病日(受傷翌日)、第3病日、第5病日、第7病日、第14病日に行った。このサンプルを用いて、神経特異エノラーゼ(NSE)とトロンボモジュリン(TM)を測定した。 患者は男性5例、女性1例であった。受傷時の平均年齢は57.5±32.0歳、平均GCSは9.7±2.7であった。体温管理は、2例に脳低温療法が施行され、4例に積極的平温療法が施行された。退院時のGOSは、脳低温療法施行群は2例ともModerate disability(MD) であった。積極的平温療法群は、Good Recovery (GR) 1例、MD 1例、Severely disability (SD) 2例であった。NSEの測定値では、受傷直後(開頭術前)からICU帰室時(開頭術後)の変化は全6例において低下していた。その後もNSEは上昇せず、基礎実験のような開頭後の虚血/再潅流を示唆する所見は認められなかった。TMについては、全例でほぼ横ばいで推移をしており開頭後の虚血/再潅流障害を示す有意な所見はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、体温管理のモダリティーとしては血管内冷却装置が予定されていた。この機器は2013年には薬事法承認され、4月には保険収載される予定であったが一旦取り下げになったため血管内冷却装置の使用が困難となりプロトコールの変更が必要となった。これまで、我々の施設では体温管理には冷却ブランケットを用いていたため、体温管理のプロトコールを血管内冷却装置から冷却ブランケットに変更し、手技的には問題なく体温管理が行われた。また、近年の患者動向として外傷患者の減少と高齢化という問題がある。例年の患者数から推察して、我々の施設における70歳以下の重症頭部外傷の患者数は年間10~15症例であった。しかし、昨年は開頭術を必要とする頭部外傷の患者数は8例に留まり、今回の臨床研究に同意を得られたのは6例であった。重症度もGlasogow Coma Scale (GCS) 8点以下の重症頭部外傷は4例程度であり、70歳以上の高齢者も2例含まれている。このように頭部外傷患者の減少ならびに高齢化社会の影響にて対象患者の条件としては、中等症の頭部外傷ならびに70歳以上の高齢者についても対象症例として含まざるを得ない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、症例数を増やしていかなければならない。対策としては、県内の関連病院を含めて重症頭部外傷患者の紹介搬送を推進すべく近隣病院へお願いをする。また、当院救命救急センタースタッフに対しても再度臨床研究の説明を行い、対象症例の搬送があった場合はすみやかに臨床研究へ登録できる体制を再構築する。消防各機関に対しても重症頭部外傷患者は高次救命救急センターに搬送するよう啓蒙活動を行わなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、血管内冷却装置を使用する予定であった。この装置を使用する際のカテーテルを購入する予定であったが、今年度は血管内冷却装置が使用できなかったためにカテーテルを購入しなかった。また、頭部外傷の症例減少により予定よりも登録症例数が少なくなった。そのため、バイオマーカーの測定費用など、計画よりも少なくなってしまたっために費用が減額となった。 平成26年度より血管内冷却装置が使用可能となるため、体温管理は血管内冷却装置を使用してカテーテルを購入する。また、頭部外傷の症例数の増加を目指して様々な啓蒙活動を行うことにより、計画通りのバイオマーカー等の測定費用が必要となる予定である。
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Research Products
(2 results)