2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来皮質運動神経シートの作成と移植応用
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25462237
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 登 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40235982)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 皮質運動神経細胞 / 一次ニューロン / 片麻痺 |
Research Abstract |
脳血管障害は運動機能障害の主要な原因である。脳血管障害に対する神経細胞移植療法には大きな期待が集まっている。これまでの多くの研究は、神経幹・前駆細胞を使用し、様々な脳局所に細胞浮遊液を注入移植している。しかし通常の神経細胞移植では移植後に細胞の多くが死滅する。移植細胞はトリプシン処理により細胞浮遊液にされ、通常の細胞相互作用を取り除かれた状態で、非常に高いストレス状態におかれているためと思われる。我々はヒトiPS細胞を用いて脳血管障害の移植部位に、一番ふさわしい皮質運動神経細胞に分化させ、さらに皮質梗塞局所の解剖学的な特徴を考慮し、細胞間相互作用を保持したままの移植が可能な、新しい細胞の供給方法を開発している。脳血管障害ではより高頻度で障害される神経である前脳および皮質運動野神経への分化誘導方法はこれまでに存在しない。そこで、ヒトiPS 細胞から前脳運動神経細胞の誘導・純化法の確立を行った。現時点ではヒトの未分化iPS細胞を、レチノイン酸、sonic hedgehogの阻害物質cyclopamine 10-6M及びNoggin-Fcで刺激することで、大脳皮質の一次運動神経のマーカーとしてCTIP2陽性, Fezf2陽性, FoxP2陽性, Crim1陽性でかつヒトneural cell adhesion molecule, NCAM陽性細胞を分化誘導することができた。この細胞は細胞増殖時に取り込まれるBrdUを殆ど取り込まないことからpostmitotic neuronであることが示唆されている。即ちヒトiPS細胞から皮質運動神経細胞(一次ニューロン)を誘導できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、どのような幹細胞からであってもヒトの皮質運動神経の分化誘導方法は知られていない。 我々は本研究計画の初年度でヒトiPS細胞から高純度の皮質運動神経の分化誘導方法の確立に成功した。これまでのマウスやカニクイザル由来細胞では十分な研究実績を持つが、ヒトiPS細胞においてはこれまでの分化誘導法とは異なる成長因子が必要であることを見出したことが重要であるが、そこを乗り越えた事は十分に高く評価できる。 この細胞を用いて、既に、下記の平成26年度分に該当する研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が樹立した誘導法を用いてヒトiPS細胞から皮質運動神経を分化誘導する。これを用いて温度感応性ゲルを利用してヒトiPS細胞由来運動神経細胞シートの作成を試みる。具体的にはヒトiPS細胞由来の十分量の皮質運動神経細胞を温度感応性gelation polymer(TGP)でコーティングされた培養皿で培養する。短期間培養維持された後、SDF1, MCP1、もしくはその他ケモカインを細胞シートに添加し、より長く伸長した軸策を持つことにより耐久性のあるヒトiPS細胞由来皮質運動野神経細胞シートを得る。この段階はTGPからの脱離と神経細胞シートの回収の成功のために必須な操作である。運動神経細胞シート作成の成功の基準は、細胞シートが90%NCAM陽性細胞(全神経細胞中)である事と30-50%の細胞がCTIP2陽性かつ/あるいはFoxp2陽性(皮質運動神経細胞)である。これに成功した後で、運動神経細胞シートの移植による効率よい機能回復のための移植プロトコールの開発を目指す。我々の最終目的は梗塞周囲巣の解剖学的な特徴に合わせ新規かつ最少侵襲性の皮質運動細胞移植を開発することである。シート移植では移植細胞注入に伴う注射針による脳実質損傷は起こらない。まず運動野凍結損傷モデルを用いての移植は損傷部皮質に対応する頭蓋骨に開けた比較的小さな穴より施行する。移植部位は硬膜下、クモ膜下、およびこの部位に存在する血管の近傍とする。このアプローチは、神経細胞シートを硬膜外に置くよりは、より人間での必要性・解剖を考慮したものであると考えている。
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[Journal Article] Human iPS Cell Derived Neurons with Cortical Motor Neuron Phenotype are Relevant for Functional Recovery of Hemiplegic Mice with Injured Motor Cortex.2013
Author(s)
Kono T, Arimitsu N, Shimizu J, Takai K, Fujiwara N, Umehara T, Saito A, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Hashimoto T, Tanaka Y, Suzuki N.
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Journal Title
St.Marianna Medical Journal
Volume: 4
Pages: 31-40
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transplantation of Motor Neurons Derived from Human iPS Cells into Total Transection Model of Spinal Cord Injury in Mice.2013
Author(s)
Umehara T, Arimitsu N, Iinuma M, Shimizu J, Takai K, Fujiwara N, Saito A, Kono T, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Moroe Beppu, Suzuki N.
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Journal Title
St.Marianna Medical Journal
Volume: 4
Pages: 21-30
Peer Reviewed
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[Journal Article] IGFII/Akt Signaling Regulates Myocyte Homeostasis in Human Induced Pluripotent Stem (iPS) Cells.2013
Author(s)
Saito A, Shimizu J, Fujiwara N, Takai K, Arimitsu N, Umehara T, Kono T, Misawa H, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Moroe Beppu, Suzuki N.
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Journal Title
St.Marianna Medical Journal
Volume: 4
Pages: 41-48
Peer Reviewed
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[Journal Article] Restoration of spatial memory dysfunction of human APP transgenic mice by transplantation of neurons derived from human iPS cells.2013
Author(s)
Fujiwara N, Shimizu J, Takai K, Arimitsu N, Saito A, Kono T, Umehara T, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Suzuki N.
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Journal Title
Neuroscience Letters
Volume: 557
Pages: 129-134
Peer Reviewed
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