2013 Fiscal Year Research-status Report
追跡調査からみた腰椎椎間板ヘルニアの疾患感受性遺伝子の解明
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25462288
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川口 善治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (00262527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 庄二 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (00432112)
安田 剛敏 富山大学, 大学病院, 講師 (20377302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 椎間板 / MRI / 変性 / 腰椎 / 腰痛 / 若年者 / 前向き研究 / 脊椎 |
Research Abstract |
【背景】腰痛の頻度は極めて高いが、その70~80%が原因不明な非特異的腰痛とされ、診断や治療に難渋することがある。椎間板は非特異的腰痛の原因となる組織とされてきたが、その病態や経過に関しては不明な点が多い。今回我々は、若年者における椎間板変性をMRIで評価し、その自然経過に関して検討した。 【方法】1996年から2003年まで本学看護学科に入学した看護学生のうち学生時に初回のMRI撮影を行い、就労後に2回目のMRI画像を入手可能であった86人を対象とした。椎間板変性の評価はL1/2からL5/S椎間板までの5椎間板をSchneiderman分類に従って評価し、そのgrade(1~4)の合計を点数化し、増加したものを椎間板変性の進行と定義した。初回撮影時に変性が全くなかった群(A群)と変性を認めていた群(B群)で変性進行に差があるかを検討した。 【結果】86人のうち3人が男性、83人が女性で、MRI初回撮影時の平均年齢は20.9±0.40歳、平均経過観察期間は9.81±3.51年であった。初回撮影時の平均点数は5.64±0.86、2回目撮影時の平均点数は、6.37±1.30であり、有意差を認めた(p= 0.00045)。A群は58人であり、そのうち19人(32.8%)は変性の進行を認めた。B群は28人であり、そのうち18人(64.3%)は更なる変性の進行を認め、B群で有意な椎間板変性の進行を認めた(p= 0.0057, OR=3.69)【考察】腰痛の原因ともなりうる椎間板変性の発生因子には加齢、肥満、喫煙、スポーツによる力学的負荷といった環境的要因に加えて遺伝的要因もあると報告されている。今回の研究において20歳代前半で椎間板変性を有する場合、有しない者と比較し3.7倍椎間板変性が進行する結果が得られた。このことから椎間板変性が進行しやすい集団が存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで以下のことが達成できた。 1)80名を超える学生を平均9.8年フォローアップできた。人数は当初予想していたものをやや下回っている。できれば100名を検討したいと考えている。これからも学生時代にMRIを撮像している対象者にコンタクトをとり、同意を得た上で研究に協力して頂くように努めたい。フォローアップ期間が9.8年であったことは非常に評価できる点であると考えている。若年者に対するおよそ10年に渡るフォローアップはこれまで例がないこと、また椎間板変性が進行するであろうと予想される十分な期間を経ていることがその理由である。 2)MRIにより腰椎椎間板変性の進行の有無を評価できた。L1/2からL5/S椎間板までの5椎間板をSchneiderman分類に従って評価し、そのgrade(1~4)の合計を点数化し、増加したものを椎間板変性の進行と定義した。これを3人の検者で独立して2回施行し、inter-observer agreement, intra-observer agreementを評価した。ともに一致性は妥当であり、評価が正しいことが認識できた。 3)腰痛に関するデータを採取できた。対象者全員からアンケートにより腰痛に関するデータを採取した。学生時代にも同様な腰痛に関するアンケートを施行しており、これを比較することで有用な情報が得られると考える。今後は椎間板変性の進行と腰痛の関連について検討して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
対象者の数を増やしデータの正確性を期したいと考えている。今後の研究として主に以下の2つを考えている。 1)MRIによって評価された椎間板変性の進行が腰痛と関連しているか?腰痛に関するアンケート調査を分析し、腰痛がフォローアップ期間に増悪しているか否かを調査する。そのデータと椎間板変性の進行の有無の関連を調べ、椎間板変性が進行する際に腰痛が生じているか否かを検討する。 2)椎間板変性進行に関する疾患感受性遺伝子を探る。対象者からはすべて同意のもとに学生時代にDNAが採取されている。これを用いて疾患感受性遺伝子を検討する。これまでに我々はADR、AGC、CLIP、COL9、ASPN、SKT、CHS3の遺伝子が腰椎椎間板疾患(腰椎椎間板変性およびヘルニア)に関連することを報告している。これらはすべてSNP(single nucleotide polymorphism)の検討である。このデータを基にさらに新規の遺伝子を含めて、椎間板変性進行に関する疾患感受性遺伝子を探ることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通りに進行しているが、集まった対象者は86名と目標としていた100名を下回ったことから使用額に余りが生じた。 今後は以下のように使用する予定である。 1)対象者をできるだけ増やすための資金:学生名簿を使用して直接対象者に連絡をしていた。今後はネット等の通信網を活用し、数を増やしたいと思っている。よってそのための謝金、MRI撮像費が必要である。2)椎間板変性進行に関する疾患感受性遺伝子を探るための資金:これまでに報告がある疾患感受性遺伝子を対象者で調べて、椎間板変性の進行についてもこれらのSNPは関連性があるか否かを探る。また新規の遺伝子もあわせて検討したいと考えている。3)学会発表および論文作成のための資金:これまでのデータは昨年全国学会(日本腰痛学会)で発表を行った。さらに多くのデータが集まりつつあり、これをまとめて今後国際学会(International Society of the Study of the Lumbar Spine)に報告を行うことを予定している。さらに今後は英文雑誌への投稿を予定している。
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