2015 Fiscal Year Research-status Report
特発性側弯症の新規発症メカニズムに基づく動物モデル作成
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25462296
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 俊郎 九州大学, 大学病院, 准教授 (60346799)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 思春期特発性側弯症 / 体幹変形 / 胸椎 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性側弯症での脊椎変形の発症メカニズムを明らかにするため、昨年度作成したマウスを用いての側弯症モデルを解析した。マウス側弯モデルに用いた胸椎圧迫装具は、マウス胸郭を前後につぶして胸腔前後径を減少させるものであったが、側弯を発症したメカニズムが、肋骨、心臓、呼吸、肺、横隔膜、大動脈などどの臓器を介するものかを明らかにすることでさらにヒトへの治療応用が可能と考え、研究を進めた。マウスモデルで初期に心臓が左に変位したものが右凸側弯を生じるのに対し、初期に心臓が右に変位したものは左凸側弯を生じることが観察された。また、心臓の拍動、呼吸変動などが椎体変位に影響すると考えられるが、特に呼吸に同期して側弯マウスの胸椎の弯曲方向へ向かう動きが観察された。これらから、初期の右凸胸椎カーブは心臓との位置関係が重要であること、また、側弯の増強には呼吸に伴う肋骨の動きが重要である可能性があると考えられた。 さらに、前年度から引き続き、側弯患者の立位バランス計測法についてデータ解析を進めた。従来の大腿骨頭を基準とする方法で計測が困難な症例については、新たな骨盤指標(Articular line of ilium)が有用であることが再現性を持って検証されたため、これらの結果を国際雑誌に発表した。(Doi et al. A new sagittal parameter to estimate pelvic tilt using the iliac cortical density line and iliac tilt: a retrospective X-ray measurement study. Journal of Orthopaedic Surgery and Research10:115) マウスモデルを用いて,一旦発症した側弯について別の装具を装着して進行防止を図る実験については、基礎データを集める段階で再現性がなかなか得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
思春期特発性側弯症の健常人データは、胸郭前後径の小ささと側弯発症に因果関係があると結論づけられたが、マウスで胸郭前後径を減少させる装具装着により、ヒトの思春期特発性側弯症と近似した体幹変形を得ることに成功した。また、マウスモデルでの側弯発症のさらに詳細なメカニズムとして、初期の側弯カーブの方向に心臓の位置が関与する可能性があること、側弯進行に肋骨を介する呼吸変動が関与する可能性がある知見を得た。これらの知見からヒトの思春期特発性側弯症治療の際の装具の考え方など治療方法の改善点などを検討していくことが出来ると考えられる。 また、側弯症のsagital balance計測の新たな指標を提唱し、論文として発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
側弯症患者においても胸郭の前後系と、心臓の位置の変位は胸郭回旋、胸郭変形と相関することが明らかとなった。また、マウスモデルで胸郭圧迫が心臓の位置、肋骨への力の伝達で側弯の方向、進行に関与している可能性があることが明らかとなった。以上の知見をヒトへ応用するために、①10才以下の若年発症側弯症例を集めて、胸郭前後径と側弯進行程度の差を検討する、②ヒトでの側弯装具治療の際に効果のある装具を過去さかのぼって検証し肋骨への力の伝導様式の意義について調べる、③マウスモデルで肋骨切除などを加えることにより側弯進行の防止が可能か検証する,ことなどを中心に研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
雑誌投稿に際し、校正および掲載決定後の投稿料として確保し雑誌投稿を行った。しかし、年度内に掲載決定とならなかったものがあったため年度内に使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿している原稿が、雑誌掲載となった際、その掲載料および校正料として用いる予定である。
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