2013 Fiscal Year Research-status Report
骨軟部肉腫における腫瘍特異的融合遺伝子を標的とした血中循環微量腫瘍細胞の検出
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25462325
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀田 哲夫 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (00272815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 寛之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30361900)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨軟部肉腫 / 融合遺伝子 / 血中循環微量腫瘍細胞 |
Research Abstract |
平成25年度は様々な組織型の肉腫細胞が特異的に発現している融合遺伝子を標的として、定量的RT-PCR法による検出感度について検討を行った。その結果、SYBR Greenという蛍光色素を用いたインターカレーター法による定量的RT-PCR法を用いることで、Nested-PCR法とほぼ遜色ない増幅産物の検出が可能であり、操作手技も比較的簡便であることが判明した。具体的には、対象としてこれまでに胞巣状軟部肉腫細胞株ASPS-KYを用いたASPL-TFE3融合遺伝子の発現、滑膜肉腫細胞株SYO-1, HSSYIIを用いたSYT-SSX1, 2融合遺伝子の発現、Ewing肉腫細胞株SKNMCを用いたEWS-FLI1融合遺伝子の発現について、高感度での検出が確認できた。 さらに、RT-PCR法を基盤として標的遺伝子検出を行う際の基本的な考えとして、できる限り少数の肉腫細胞から正確にRNAを抽出することが必要となる。このステップに関しては近年、様々な企業から高精度のRNA精製きっとが発売されており、いくつかのものを比較検討したところ、QISGEN社のRNeasy® Microを用いることで、数個の肉腫細胞から精度の高いRNAが抽出可能であることも判明した。 In vitroの実験系として、ボランティアから採取した正常末梢血液中に混入し、血液2mlに対して上記の細胞株を用いて、その数個の肉腫細胞を混入し、前期のキットやRT-PCR法を行うことにより、高感度に融合遺伝子の検出ができることはすでに確認できた。また、インフォームドコンセントのもとに採取した、滑膜肉腫と胞巣状軟部肉腫で多発転移のある患者の末梢血からも、同様の手法により特異的な融合遺伝子の検出が行えており、これまでに報告のない新しい治験である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroの実験系においては、これまでに手技、手法は確立できており、本研究のカギとなる、標的融合遺伝子の検出感度に関する検討も予定通り進んでいる。本研究の最終目的は、肉腫患者の末梢血から血中循環微量腫瘍細胞を高感度に検出し、臨床的に病勢の把握に役立てることである。これまでに準備段階の数例の検討ではあるが、検討中の手法を用いることにより、全身の多発転移を伴った患者血液から、実際に標的となる融合遺伝子の検出が可能であることが判明している。研究に用いている遺伝子の抽出試薬や解析器械は日進月歩であり、さらに高感度な検出法の検討は続ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、最終的な目標である臨床応用をめざし、以下の通りの研究を継続していく。 まず、in vitroの実験系においては、今後の課題としてさらに高感度な検出法として、蛍光標識プローブを用いた定量的PCR法を考えている。さらに最適なPCRプログラム、プライマー、蛍光プローブの設定についても検討を進める。遺伝子抽出の試薬も日進月歩で開発されており、これらも順次取り入れていく。 臨床ではこれまでの数例の実績を踏まえ、様々な肉腫症例からインフォームドコンセントを得た後に末梢血サンプルを採取し、腫瘍特異的融合遺伝子検出について検討する。その結果が病勢との関連があるか、レントゲンCT等従来の転移巣検出法と比較検討を行う。さらに胞巣状軟部肉腫におけるASPL-TFE3やEwing肉腫におけるEWS-FLI1、滑膜肉腫におけるSYT-SSXなど、特異的融合遺伝子の検索だけでなく、WT-1など多くの悪性腫瘍に高発現の遺伝子を検出可能となれば、多種の肉腫において簡易に病勢の把握や転移の検索が可能になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検出試薬の検討により消耗品の購入費用が当初予定していたものより安価となったことや、研究発表に必要とした出張費が次年度への持ち越しとなったことによる。 これまでより、さらに高感度の検出試薬の使用を検討しており、多少購入費が高額となると予測され、また成果発表の機会も増えて、出張費も増加するものと予測される。
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