2013 Fiscal Year Research-status Report
幼若脳に対する麻酔薬の興奮作用と神経毒性との関係の解明
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25462408
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
石和 大 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (30457858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 富男 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (00193110)
紙谷 義孝 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (90381491)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アポトーシス / プロポフォール / 幼若脳 / ブメタニド |
Research Abstract |
近年、新生児動物を麻酔薬に長時間曝露すると、幼若脳に広範な神経細胞死を起こし、成熟後も持続する学習能の低下や社会行動の異常を惹起する事が報告されている(J Neurosci 23:876, 2003. Anesthesiology 107:427, 2007)。これを支持する臨床的事実は明らかでないが、産科、新生児麻酔の安全性を確立するため、この神経毒性の機序と予防法を解明する事は臨床的に急務であるため,今回我々はこの研究を開始した。まずは使用動物は幼若および成熟ラットとしてSDラット生後7日齢(P7),28日齢(P28)のものを使用することとした。次にこれら動物を使用して,静脈麻酔薬の至適投与量の決定を行った。今回の研究では神経細胞のアポトーシスについて検討するため,麻酔薬による著明な呼吸抑制に伴う高炭酸ガス血症もしくは低酸素血症を来してはならないため,酸素無投与下および酸素投与下(O2 6L/min)においてプロポフォールの投与量をdoseを分けて断頭下に血液ガス分析を行った。その結果,酸素無投与下では50mg/kgで,P7, P28ともに血液ガス上低酸素血症,高炭酸ガス血症を認めず,かつ安定した鎮静作用を認めた。また,酸素投与(O2 6L/min)下では,75mg/kgまでならP7, P28ともに血液ガス上低酸素血症,高炭酸ガス血症を認めず,かつ安定した鎮静作用を認めた。平成25年度は麻酔投与量の検討、低酸素などの麻酔以外の因子を除くための酸素投与などの必要性の検討に終始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
この研究を施行する上で,まず最初に行うべき麻酔投与量の検討、低酸素などの麻酔以外の因子を除くための酸素投与などの必要性の検討に予想以上に時間が必要とされた。これは,麻酔薬による幼若脳におけるアポトーシスを検討する上で必須の検討である。また,静脈麻酔薬のプロポフォール以外に揮発性吸入麻酔薬のイソフルレンも同様に検討していく予定であるが,イソフルレンに関しては麻酔投与量の検討、低酸素などの麻酔以外の因子を除くための酸素投与などの必要性の検討をまだ行っていないので今後検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、静脈麻酔薬のプロポフォール,揮発性吸入麻酔薬のイソフルレンの幼弱脳におけるp75NTR受容体活性化とアポトーシス増加にGABAA受容体刺激を介する興奮作用が関与するのかを明らかにする。これにより、麻酔薬の神経毒性のメカニズムと予防法の解明に寄与することを目的とする。今後はプロポフォール,イソフルレンの至適投与下で幼若脳において発生するであろうアポトーシスがNKCC1選択的阻害薬であるブメタニド投与で抑制されるか否か免疫染色法によりcleaved Caspase3, p75NTR受容体の蛋白陽性細胞数を測定し,群間で比較検討をしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究においては実験の進行遅延が生じている。まずは,アポトーシスの観点から研究を始めるにあたって,低酸素血症を生じさせないための麻酔薬の至適投与量および酸素投与量を詳細に決める必要性があった。よってその決定に麻酔薬のdoseの振り分け,酸素投与量の振り分けに基づく試行錯誤の実験が必要であった。これらの実験に想定外の時間を費やすことになり、当初計画にあった実験が進められずそれらの経費を使用しなかったため。 平成26から27年度に向けて本格的に免疫染色および国内外の学会発表を行っていく予定である。よって今後,薬剤,一次,二次抗体や国内外の学会参加の費用,および論文掲載にあたって英文校正や,掲載費用に使用していく予定である。
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