2013 Fiscal Year Research-status Report
脳内神経ネットワークからみた吸入麻酔薬の作用機序と発達脳に与える影響に関する研究
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25462415
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西村 欣也 順天堂大学, 医学部, 教授 (80164581)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 線条体 / 吸入麻酔薬 / GABA受容体 / パッチクランプ / tonicGABA |
Research Abstract |
近年,発達脳に対する麻酔薬の影響が懸念され,社会的にもその関心が高まっている.今回我々は日齢に伴う発達過程への吸入麻酔薬:Sevofluraneの影響を領域外シナプスより提供されるtonic GABA電流の変化により検討し,吸入麻酔薬の作用機序について考察した.日齢(P)3~35日のマウス脳スライスを作成し,大脳基底核線条体(MSN)からwhole-cell patch clamp法を用いて細胞内電流を測定した.電圧は0mV固定し人工脳脊髄液に灌流,その後tonic GABA電流を得た.Sevofluraneは灌流液中に添加し,またAmbient GABAの影響を検討するためにGABA transporter(GAT)の BlockerであるNO-711を添加してその効果を観た. その結果,P3~P35で線条体MSNにおいてtonic GABA 電流が記録され,日齢を経るに従い大きくなりP28で平衡状態に達した.また全日齢を通じてsevofluraneの添加によりtonic GABA電流の増強が観られた.さらにNO-711の添加では同様にtonic GABA電流は増大したが,その度合いは他の日齢に較べてP14で有意に増大した.このようにsevofluraneによりtonic GABA電流が増強されることが示唆された.またマウス線条体MSNにおいてGAT Blockerの添加によりtonic GABA電流が増強していたことからsevofluraneは内因性GABAに反応することが考えられた.さらにP14では他の日齢と比較してsevofluraneへの作用程度が異なることからP14付近の発達過程においてsevoflurane作用機序に対する変曲点があるように思われた.その上で発達期においてtonic GABA電流に関与するGABA-A受容体のサブユニットの構成が変化しており, sevofluraneの作用に影響している可能性がある.こうした結果を踏まえ発達過程におけるGABA-A受容体サブユニットの構成変化にSevofluraneがtonic GABA電流を介して“脳抑制系機能”に影響を与えるように思われた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸入麻酔薬がtonicGABAに影響を与えることを明らかに出来たことは本研究の最大収穫と考える.また発達過程においてマウスではP14にその変曲点が存在することを示せたのもの ヒト乳幼児に対する吸入麻酔薬の影響と鑑みるとその発見は大きいと思われる. さた,一部であるが,今実験をするめているグラミシジン穿孔パッチ法によるGABA受容体におけるクロライドイオンの電位的変局点の変化を研究し始めたが,やはりP14でその変化が現れることを見いだせたことは大きな成果である. よって達成度は高いものであった.
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Strategy for Future Research Activity |
ここで論じた吸入麻酔薬による発火パターンの変化は協力研究員の発見である.これを元に,海馬や線条体におけるgap junction への影響やPaired Pulse Facilitation の観察,さらに吸入麻酔薬暴露後の細胞内シグナル定量解析およびGタンパク質の伝道物質放出調節の実験などを組み合わせたい. これらの結果が脳における吸入麻酔薬の作用機序解明および脳高次機能障害発現の解決に寄与するものと思われる.吸入麻酔薬は世界各国の多くの施設で広く使われ,その安全性はほぼ確立されてはいるが,発達期の脳への影響,およびそれに派生する学習障害.行動異常など脳高次機能障害の解明に与える結果は大きい.本研究結果が理想の吸入麻酔薬開発に寄与するものと確信する次第である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であったソフト(パッチマスタ)の購入を控え、また、外注予定であったノックアウトマウス(水頭症マウス;老化発現マウス)の作成を学内で済ませられたため、経費を節約できたため。 本臨床研究に携わる全研究者は費用を公正に使った研究を行い、本臨床研究の公正さに影響を及ぼすような利害関係はない. 動物購入そしてノックアウトマウス維持へ使われます.当然に薬物,消耗品,さらに免疫染色のための抗体購入にあてる予定です. また薬理学的検討のために 各種ブロッカーおよびアゴニストを購入します.とくに GABAサブユニットに関する同定には 多くの薬物が必要になる.
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Research Products
(1 results)