2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性痛の脳をMRIで探索し、メカニズムと予測因子を明らかにする
Project/Area Number |
25462424
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
荻野 祐一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20420094)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 痛み / 疼痛 / 脳 / MRI / 可塑性 / 慢性痛 / メカニズム / 萎縮 |
Research Abstract |
慢性痛の社会的損失は極めて多いのにもかかわらず、その治療とメカニズム解明は遅遅として進んでいない。その理由は、慢性痛が単なる痛み感覚の持続ではなく、社会的、心理的要因が複雑に絡み合って神経の可塑的変性を来した、いわば慢性神経変性疾患とも言うべき病態だからだ。その問題を解決すべく、慢性痛に対する主観的評価(アンケート)と、客観的評価(脳MRI結果)を連結させ、社会的背景を含めた新しい多面的な慢性痛評価(アンケート)を慢性痛患者から取得し、これまで注目されてこなかった慢性痛患者の社会的因子を探ってきた。さらには慢性痛患者群の脳機能画像と健常者(コントロール群)を比較し、病態メカニズム解明を目指したが、こちらは今後の課題となっている。 しかし肝心の脳機能画像データとアンケート結果との相関解析を施行することに成功し、慢性痛の予測因子は明らかにできなかったものの、臨床的診断マーカーのない慢性痛に対し、非侵襲的な脳機能画像を用いた診断を指向できるDataを獲得した。それは極めてクリアカットでリーズナブルな結果であった。 その結果とは、患者の主観的データとMRIで相関するのは、唯一、PainDetectという神経障害性痛の度合いを測る指標と脳局所(insula, Posterior cingulate cortex, Prefrontal cortex)萎縮の所見であり、しかも相関の度合いは極めて強いものであった。揺るぎのないエヴィデンスとして、さらに研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析で躓いていたところ、邂逅ともいうべきか、脳科学解析の第一人者とも言うべき研究者と出会い、揺るぎない自信をもって解析を進めることができ、高い精度でエレガントな解析を示すことができた。 アンケートについては多施設横断研究「慢性の痛み対策研究事業」(福島県立医大整形外科紺野教授主幹)の一員として参加、平成23年度から会議や発表会、e-mailing listによる連絡により、その作成に携わってきた。自然科学研究機構生理学研究所(柿木隆介教授、乾幸二准教授)からは適宜助言を頂き効率的に研究を進めている。 本申請研究は、群馬大学内MRI室を用い、アンケート取得は当院外来において行った。当院MRI室では患者を対象に研究としてfMRI撮影をすでに行っている。当院MRI技師とは良好な協力関係を築いており診療時間内もしくは時間外に研究を行っている。MRI撮影と解析は国際電気通信基礎技術研究所(ATR)とも協力関係を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
方向性は定まった。あとは症例数を積み上げ、Data解析を進めて、真理の追究を待つのみ。慢性痛の範囲を広げ、新たな切り口も考慮中である。 26年度以降も継続的に被験者からdata取得を行う。Data取得と同時進行的に、本研究の独創点である「慢性痛患者の社会的因子を含めたアンケート(主観的評価)と慢性痛の脳活動(客観的評価)の相関を明らかにして脳機能画像の臨床応用を目指す」ため、Data解析作業が大きなウエイトを占める。結果の公表を随時おこない、非侵襲的な脳機能画像を用いた診断法として先進医療の指定取得を指向し、他の診断法との整合性についても検討する。fMRI画像解析はSPM8 (Wellcome Institute of Cognitive Neurology, London, UK)を使用している。慢性痛患者の脳活動、活動低下/増加部位を検出・数値化、脳活動data(脳活動部位と活動量/組織萎縮量)とアンケート各項目の相関解析をおこない、目的を遂行する。
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