2013 Fiscal Year Research-status Report
腎細胞がんにおけるAMPK-mTOR経路を介した新しい治療戦略の開発
Project/Area Number |
25462481
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松本 洋明 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60610673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 豪泰 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70209667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AMPK / メトホルミン / エベロリムス / mTOR経路 / 腎細胞がん / 併用療法 |
Research Abstract |
【目的】今回我々は実臨床でも使用され安全性高いAMPK阻害作用のあるmetforminを使用してその腎細胞がんでの腫瘍抑制効果について検討し、mTOR阻害剤であるエベロリムスとの併用によるAMPK-mTOR経路の抑制メカニズム、癌幹細胞抑制メカニズムの解明を試みた。 【方法】前立腺癌(PC3, LNCaP)、腎癌(786-O, 769-P, ACHN, Caki-1, Caki-2)、膀胱癌(T24, KK47, TCC-SUP, 5637, UMUC3, SW780)の細胞株を用い、細胞増殖抑制効果の確認実験を行った。各細胞株にメトホルミンとエベロリムスを段階的に濃度調整して添加し、WST-1アッセイを行った。また、対照実験としてAMPK活性化薬AICARとAMPK阻害薬compound Cを添加し、細胞増殖能を測定した。 【結果】いずれの試薬も濃度依存性に細胞増殖抑制効果を示した。また、いずれの癌種においてもAMPK活性化、阻害両方で細胞増殖が抑制された。しかしながら、メトホルミンとエベロリムスの併用にて細胞増殖抑制の相加、相乗効果は認められなかった。 【考察と今後の展望】細胞生存にとってAMPKの活性化と抑制はどちらも過剰にならないよう厳密にコントロールされていることが示唆され、mTOR阻害剤の単純な併用はうまくその機能を制御できない可能性が考えられる。今後機能解析を行うとともに、腎細胞がんで広く使用されているチロシンキナーゼ阻害剤を併用してmTOR経路以外の細胞増殖シグナルを抑制することにより相乗効果が得られるか検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予想に反しAMPK活性化とmTOR阻害による細胞増殖抑制の相乗効果が得られず、その先の解析に進めない状況である。相乗効果の得られない理由としてはメトホルミン自体のAMPK活性化作用が弱く、エベロリムスのmTOR阻害作用が強すぎてあまり上乗せ効果が期待できていない可能性とmTOR経路の阻害により逆にmTOR経路以外の細胞増殖シグナル経路が活性化されて、うまく相乗効果として現れない可能性等が考えられる。ほかにAMPK活性化によりmTOR経路の抑制のほかに逆に細胞生存に有利な経路が活性化され2剤の効果が相殺されている可能性が示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は相乗効果の表れない理由についてシグナル伝達経路の解析を行うとともに、mTOR経路以外の細胞増殖シグナル経路を阻害することで併用効果が得られる可能性を探索する。具体的には現在転移性または根治切除不能腎細胞がんの治療にて主に用いられているチロシンキナーゼ阻害剤や降圧薬として一般に用いられているアンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)との併用で有意な増殖抑制効果が得られるか、得られればそのメカニズムをin vitroとin vivoで確認していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は実験計画が予定より遅れており、機能解析やマウス使用のin vivo実験にまですすめなかったため、当初予定額より支出が下回った。 25年度の繰越額は新たな試薬購入(チロシンキナーゼ阻害剤やそのターゲットとなるVEGFレセプターやPDGFレセプターのシグナル伝達経路の抗体等)と機能解析(ウエスタンブロット)関連試薬、RTPCR関連試薬、マイクロアレイ解析等)に充てる予定である。
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