2013 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌化学予防薬がアンドロゲンシグナルに及ぼす分子薬理学的機序の解析
Project/Area Number |
25462484
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横溝 晃 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60346781)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 前立腺癌 / 化学予防 / 分子生物学 |
Research Abstract |
前立腺がんは本邦では増加の一途を辿っており、その治療も重要ではあるが、発症予防は最も重要な課題と言える。前立腺癌の発症と進展には、アンドロゲン受容体 (AR)シグナルが最も重要であり、食物摂取や内服薬に関する疫学的な研究より、ARと関連する化学予防が有効であることが判明しているが、その分子機序については不明なことも多い。我々は、これまでに、前立腺がんに対するアンドロゲン除去療法(ADT)や去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)への進展の際に活性酸素や酸化ストレスが大きな役割を果たし、この酸化ストレスによって転写因子であるTwist-1、YB-1 が発現誘導され、ARの発現誘導につながる分子機序を解明した。これらの研究において、AR-プロモーターレポーターアッセイ(Luciferase)、PSA-プロモーターレポーターアッセイ、各々のdeletion construct、AR-GFPによるARの核内移行の観察、real-time PCR法、AR プロモーター領域のChiP assay, ゲルシフトアッセイ、siRNA法、ヌードマウス移植研究、免疫組織学的検討などに精通し、また、前立腺がん細胞株であるLNCaPとそのCRPC株として我々が樹立したCxR細胞、および、CRPC前立腺がん細胞株PC-3、DU-145、22Rv1細胞や前立腺非がん細胞(RWPE-1)を有している。 この研究では疫学的にその有効性が報告されているイソフラボン、スタチン、アスピリン、リコペンなどの物質が、ARシグナルやその関連分子とどのような生理活性を有し、前立腺がんの予防に関与しているか分子生物学的にその機序を解明することを目的としている。前立腺癌の予防薬の分子薬理学的作用機序が明らかになれば、予防薬普及の原動力となり、大規模な介入試験を行う動機付けを行うことができる。その結果、将来前立腺癌の化学予防の発展に大きく貢献することが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
米国での大規模疫学調査から、アスピリンを含むNSAIDsが前立腺がんのみならず、大腸がんや肺がんを予防する効果のあることが明らかとなった(Harris R, Inflammopharmacology 2009)。また、NSAIDs内服者は前立腺全摘後のPSA再発率を低下させることも報告されている(Smith MR, et al, J Clin Oncol 2006)。我々は、LNCaP細胞と22Rv1細胞において、アスピリンはARの発現低下を生じることを見出し、prostaglandinとその受容体への影響を検討したところ、アスピリンでは、Prostaglandin 受容体EP3とEP2を介したARの発現低下がその機序であることを新たに見出し発表した(Endocr Relat Cancer. 2013 May 30;20(3):431-41,Prostate Cancer Prostatic Dis. 2014 Mar;17(1):10-7. )。 また、大豆に豊富に含まれるイソフラボンは、前立腺がんの予防に効果があると期待されている(Zhou JR, J. Nutr. 1999)。その中でもゲニステインやダイゼインは、代表的なイソフラボンであり、ダイゼインは摂取された後に腸内細菌叢によってエクオールに代謝される。我々は、これら3つの代表的なイソフラボン類の中で、前立腺癌細胞LNCaPにおけるARの発現低下にエクオールが最も強いAR抑制活性をもつことを今回明らかにしている。その機序として、ARの転写抑制よりもAR蛋白分解の促進であるという結果を得ている。さらにエクオールは、LNCaP細胞において、dehydrotestosteroneの存在なし/ありの両方の状況でも増殖抑制効果を示し、その抑制効果は細胞のapoptosisが原因であることを明らかにした。 リコペンはカルテノイドの一つであり、米国の大規模疫学調査でその化学予防の効果が報告され、リコペンの血中濃度の高い群では有意に前立腺がんの罹患が低かった(Giovannucci E et al. Int. J. Cancer 2007)。我々は、リコペンもARの発現低下を生じるというpreliminaryな結果を得ており、その機序解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
イソフラボン研究では、、エクオールがARの転写抑制よりも蛋白分解亢進によってAR低下を来たすという結果を得ているため、ARのユビキチン-プロテアソーム系関連の分子の解析を進める。また、ARの蛋白分解系として最近報告されたskp2との分子調節についても解析を進める。我々はすでに、スタチンが、ARの蛋白分解亢進により、アンドロゲン感受性を低下させることにより、前立腺がん発症に寄与している可能性があることを報告した( Yokomizo A, et al. Prostate 71:298-304, 2011)。ARはubiquitin-proteasome pathwayを介して分解されることが示されており(Tang YQ., Asian J Androl 2009;)、スタチンとこれらの分子の発現調節についても今後解析を進める。 さらに、我々は、リコペンもARの発現低下を生じるというpreliminaryな結果を得ており、その機序解析を進めるとともに、赤ワインに含まれるレスベラトロールについても同様の解析を行う予定である。。
|
-
-
-
[Presentation] Isoflavons, daidzein and equol, are involved in the biology of prostate cancer2014
Author(s)
Momoe Itsumi, Masaki Shiota, Akira Yokomizo, Eiji Kashiwagi, Ario Takeuchi, Keijiro Imada, Katsunori Tatsugami, Junichi Inokuchi, Takeshi Uchiumi, Seiji Naito
Organizer
The 4th Asian Pacific Prostate Society in Okinawa
Place of Presentation
沖縄県 ブセナテラス
Year and Date
20140321-20140322
-
-