2013 Fiscal Year Research-status Report
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25462505
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橘田 岳也 北海道大学, 大学病院, 助教 (40374441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三井 貴彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (90421966)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経解剖学 / 排尿障害 / ラット |
Research Abstract |
我々のグループは、排尿-蓄尿反射が起こることによって、中脳水道周囲灰白質で神経伝達物質が変化することを確認してきた。今回の検討は、さらに上位中枢である前頭前野皮質が蓄尿時には中脳水道周囲灰白質に対して抑制性のシグナルを、排尿時には促進性のシグナルを入力することを想定して実験をスタートした。病態モデルでは、正常とは違った神経伝達物質の動態をとるものと考えられる。例えば、促進性の神経伝達物質が正常の排尿-蓄尿反射のとき以上に増加したり、正常の排尿-蓄尿反射では動きのなかった神経伝達物質が病態モデルの排尿-蓄尿反射では増加するといった現象が観察されることが予測される。これは、下部尿路の病態モデルでは、中枢神経の神経伝達の再構築が起こるためと予想される。さらに、脳内の微少物質量をマイクロダイアリシスの結果に基づいて検討行い、神経伝達物質に関わる刺激薬や遮断薬を投与した場合、病態モデルにおける下部尿路機能の異常は、正常に近づくと予想される。 現時点までに、前頭前野皮質における神経伝達物質の一つであるセロトニンが排尿反射に伴って減少する可能性を示唆する結果が示されている。この結果は複数回の排尿反射に際には前頭前野皮質の神経学的活動が①促進性の脳内核に対して抑制性のシグナルを増強して抑制させるか②抑制性の脳内核に対して抑制性のシグナルを増強することで促進させるかの反応を起こしていることを示唆する。前頭前野皮質から最終的に脊髄への排尿反射を引き起こす橋排尿中枢への神経学的つながりがあることはすでに確認されており、促進性のシグナルを脊髄に送っていることが確認されているため②が引き起こされていると考えられる。今後は、この結果をふまえて、前頭前野皮質のセロトニンをコントロールすることで、排尿反射に変化が見られるかを確認し、さらに病態モデルではどのような違いがあるかを確認していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の初めより脳内の上位中枢である前頭前野皮質が蓄尿時には中脳水道周囲灰白質に対して抑制性のシグナルを、排尿時には促進性のシグナルを入力することを想定して実験をスタートした。中脳水道周囲灰白質は膀胱内の情報が上位に届く際に最初に経由する核である。逆に排尿反射が引き起こされた際には橋排尿中枢が脊髄以下へ排尿反射の“ゴー”サインが出ると想定されている。まず事前検討として、前頭前野皮質内のどの部位が、より排尿反射に関与するかを確認するために、神経活動に伴って増量するc-fos蛋白量を確認して、排尿反射に強く関与する部分を同定した。さらに、マイクロダイアリシス法を用いて、この部位に透析膜を挿入して、覚醒下で排尿反射を起こして神経伝達物質量を確認していく実験を行った。セロトニンについては、まだ少数例であるが排尿反射に伴って減少する可能性を示唆する結果が示されている。この結果は複数回の排尿反射に際には前頭前野皮質の神経学的活動が①促進性の脳内核に対して抑制性のシグナルを増強して抑制させるか②抑制性の脳内核に対して抑制性のシグナルを増強することで促進させるかの反応を起こしていることを示唆する。前頭前野皮質から最終的に脊髄への排尿反射を引き起こす橋排尿中枢への神経学的つながりがあることはすでに確認されており、促進性のシグナルを脊髄に送っていることが確認されているため②が引き起こされていると考えられる。 さらに、現在パーキンソン病ラットモデル、前立腺肥大症ラットモデルの作成を行っており、これらのモデルにおける検討を始めている。以上より当初の予定に対しておおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までに得られた結果をふまえて、前頭前野皮質のセロトニンをコントロールすること(薬理学的に増加、減少さらにサブタイプごとの検討)で、排尿反射に変化が見られるかを確認する予定である。さらに確立した病態モデル(現在パーキンソン病ラットモデル、前立腺肥大症ラットモデル)ではどのような違いがあるかを確認していく予定である。今回の動物モデルは臨床的に過活動膀胱(頻尿)となるモデルであるため、本検討によって得られる結果は将来の治療において有用であると考えられる。
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Research Products
(1 results)