2013 Fiscal Year Research-status Report
女性ホルモンの抗酸化作用による尿路結石の抑制機構の解明とその臨床応用
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25462523
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
広瀬 真仁 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70529172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郡 健二郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30122047)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40326153)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70444966)
新美 和寛 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70551274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 尿路結石 / 女性ホルモン / 酸化ストレス / 細胞障害 / ミトコンドリア / オステオポンチン |
Research Abstract |
女性の尿路結石症の罹患率は男性と比較して低いが、その原因は不明で、結石発症のメカニズムもいまだ明らかではない。本研究では、結石形成のメカニズムと女性の結石罹患率が低い理由を解明するために、酸化ストレスと細胞障害の観点から結石形成の性差について検討を行う。さらには細胞障害や酸化ストレスとの関わりを解明することで、新たな結石予防法の開発を目的としている。 平成25年度における研究では、腎尿細管細胞とミトコンドリア障害からみた性差について研究した。雌雄のマウスにシュウ酸前駆物質を投与し、結石形成に至るまで、腎尿細管細胞とミトコンドリア障害について、主に透過型電子顕微鏡を用いて数時間毎に仔細に形態学的、分子生物学的に検討し、雌雄の違いを明らかにした。結石形成モデルマウスの微細構造は、まずミトコンドリアの変形がおこり、尿細管細胞、微絨毛の崩壊、尿細管管腔内への崩壊物質の脱落、そして崩壊物質が凝集することで結晶核の形成を起こしていることが明らかになった。メスのマウスでは、これらの形態変化が、オスに比べて、やや遅く経過している傾向が見受けられた。 この結果は、女性ホルモンが結石形成期に起きる細胞障害およびミトコンドリア障害に対する防御作用を持っている可能性が示唆された。 今年行った研究の成果はいままで明らかになっていなかった尿路結石形成初期の機序を明らかにし、ミトコンドリアの係わった細胞障害、酸化ストレスの関連性、重要性を明らかにするものであり、ミトコンドリア保護を通した新たな尿路結石予防の可能性が考えられた。そして、これらは、女性ホルモンの新たな作用のひとつである可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況としては、研究Iの検討「女性ホルモンの抗酸化作用から見た尿路結石形成機序の解明」において、結石モデルマウスの微細構造の観察、尿中の酸化ストレスマーカーの測定は行なったが、組織の固定条件等の問題で、繰り返しの作業が重なり、予定外の時間がかかり、いまだ細胞障害の免疫組織学的検討の途中である。 並行して平成26度以降で行うOPNノックアウトマウスを用いての検討も行っているが、平成25年度の当初の予定であった、両側卵巣摘除マウスの作成、検討の終了にはいまだ至っておらず、現在女性ホルモン投与方法の検討中であり、予定よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度からは、「卵巣摘除雌マウス、女性ホルモンを補充した卵巣摘除雌マウスを用いて、平成25年度の結果が女性ホルモンによる結果であるか検証する。」「雄、雌のOPNノックアウトマウスを用いて、細胞障害についての検討を行い、さらに、電子顕微鏡を用いた免疫染色法で、OPNの局在と動態を詳細に検討し、結石形成過程でのOPNと女性ホルモンの関係を明らかにする。」この2点を研究する予定である。そして、結石形成初期において、女性ホルモンが腎尿細管細胞の微細構造と結石マトリックスに与える変化を観察する。そして、これらの結果を踏まえて、新たな結石予防法を開発することを最終目標としている。 具体的には、女性ホルモンによる腎尿細管細胞とミトコンドリア障害の抑制効果を両側卵巣摘除を行った雌マウス、そして、卵巣摘除後に女性ホルモンを投与した雌マウスへ、グリオキシル酸を腹腔内投与し、腎臓を摘出、結石形成の観察、成分分析、電子顕微鏡観察、細胞障害についての免疫染色法等における検討を行い、女性ホルモン作用について検討する。そして、電子顕微鏡を用いたOPNの免疫染色法を用いて、腎尿細管細胞内、腎間質内、管腔内、結石内のOPNの局在を超微細形態と併せて観察することで、結石形成期における女性ホルモンとOPNの関係を検討し、さらに、OPNノックアウトマウス、トランスジェニックマウスの雄、雌(すでに作成済み)を用い、女性ホルモンおよびOPNの関係について明らかにする。 そして、これらを踏まえたうえで、結石モデル動物に、女性ホルモン用の抗細胞障害物質を投与し、予防効果の検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、予定より研究の達成が遅れており、予定の実験計画となっていない。具体的には、両側卵巣摘除マウスの作成、女性ホルモンと細胞障害、結石形成など関連性の検討にはいまだ終了していない。 その際に必要であった、マウス、投与する女性ホルモン、酸化ストレスマーカー関連抗体、PCR関連試薬の購入、尿・血液生化学測定の外注に研究費を使用する予定であったが、今年度の使用にはいたらず、来年度以降で必要になる見通しである。 平成26年度は、上述したように、「卵巣摘除雌マウス、女性ホルモンを補充した卵巣摘除雌マウスを用いて、平成25年度の結果を検証する。」「雄、雌のOPNノックアウトマウスを用いて、細胞障害についての検討を行い、さらに、電子顕微鏡を用いた免疫染色法で、OPNの局在と動態を詳細に検討し、結石形成過程でのOPNと女性ホルモンの関係を明らかにする。」この2点を研究する予定である。そして、平成27年度以降では、これらの結果を踏まえて新たな結石予防法を開発し、最終的には患者へ投与できるよう、創薬することを目標としている。 そのために、マウス、女性ホルモン、酸化ストレスマーカー関連抗体、PCR関連試薬の購入、尿・血液生化学測定の外注に研究費を使用予定の他、OPNノックアウトマウスの維持、繁殖関連の費用、電子顕微鏡での免疫組織化学用抗体、他の尿路結石関連遺伝子の抗体購入にも研究費を使用する予定である。
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