2013 Fiscal Year Research-status Report
免疫グロブリンGのシアル化Fc(sFc)による抗体関連型腎拒絶反応の制御
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25462536
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥見 雅由 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60512978)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腎移植 / 抗体関連型拒絶反応 / 免疫グロブリン |
Research Abstract |
免疫グロブリンは、抗体関連型拒絶反応(AMR)に対する予防・治療に効果が認められ使用されているが、いまだ作用機序は解明されていない。また近年、自己免疫疾患において、Fc部をシアル化した免疫グロブリン(sFc)による優れた抗炎症効果が示されており、移植領域への応用についてラット腎移植モデルを用いて検討する予定である。しかし、現時点で、供給予定先の一般社団法人日本血液製剤機構中央研究所からsFcの安定した提供が困難との報告を受け、まずは2年目に予定していた抗ドナー抗体(DSA)陽性急性抗体関連型拒絶反応モデルの作成を行い、より臨床に即した形で免疫グロブリンの治療効果、作用機序を解明することとした。ドナーラット(Brown Norway:BN)の皮膚をレシピエントラット(LEWIS:LEW)に移植し感作させることで、ドナーMHCに対する抗体を産生させ、急性抗体関連型拒絶反応モデルを作成した。レシピエントの血清とBNラットの胸腺から分離したTリンパ球を混合培養し、フローサイトメトリー(MESF法)を用いて、DSAの産生を確認した。続いて、LEWラットの左腎を摘出し、そこへBNラットの左腎を移植、最後にLEWラットの右腎を摘出し、生着率(生存率)を求めた。BN-LEW間で腎移植した非感作モデル(皮膚移植なし)、感作モデル(皮膚移植あり)のそれぞれの平均生着率は10.4日(n=5)、4.25日(n=4)(P<0.01)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗ドナー抗体(DSA)陽性急性抗体関連型拒絶反応モデル確立のため、まず皮膚移植を行ったが、どの部位の皮膚をどの部位に移植するか、皮膚切片の大きさなど、皮膚移植の方法には様々な方法が報告されており、確実にDSAの産生される系を確立するため、複数の方法を試したが、皮膚移植2週間後に評価し、DSAが産生されていない場合、さらにもう一度皮膚移植を行い、評価ということになると一カ月間以上が必要であり、研究の遅れの原因となった。またDSA産生の確認には、フローサイトメトリーを使用するが、その際レシピエントの血清とドナーTリンパ球を混合し、ドナーのTリンパ球上のMHCとの反応を計測する。まず、脾臓や胸腺からリンパ球分離が必要で、さらに新たにフロサイトメトリーでは、MESF値という各設備や各設定を標準化する方法を使用したため、その方法を確立することに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は系の確立したAMRモデルに、腎移植後免疫グロブリンを腹腔内投与し、抗体関連型拒絶反応抑制作用機序を検討する。病理組織学的にAMRの評価として血管炎病変やC4d 沈着の有無を検討する。また、移植腎および脾臓内のCD209陽性B 細胞のFcγRIIB の発現亢進とFcγRIII の発現低下を免疫組織染色で行う。さらに、脾臓および移植腎内に浸潤したB 細胞を(CD20、CD209)を磁気ビーズにより分離し、FcR の発現亢進・低下をフローサイトメトリーにて評価する。免疫グロブリンを投与することにより、DSAや各サイトカイン発現が抑制されるかを解析する。血清中のDSAの推移およびFcγRIIB 発現亢進に影響を及ぼすIL-4、IL-33 量の測定をCBA またはELISA により測定する。これらの相関を評価することで、生体内のIVIgの効果判定の指標となるバイオマーカーの探索を行う。また、sFcの供給が再開され次第、同様にそれらの検討も行う。
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