2013 Fiscal Year Research-status Report
胎盤特異的発現を示す細胞融合抑制タンパク:サプレシンのin vivo機能解析
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25462567
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
杉本 潤 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10315476)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 内在性レトロウイルス / サプレシン / 細胞融合 / 胎盤 |
Research Abstract |
サプレシンは我々が新規に単離・同定した細胞融合抑制タンパク質である。胎盤に必須な機能である細胞融合を調節するタンパクとして、非常に重要な役割を持つことが予想されていた。しかし、これまでヒト生体内 (in vivo) での融合抑制効果は確認されていない。ヒト生体内での生理学的意義解明の最初のステップとして、ヒト個体間におけるサプレシン遺伝子配列の保存度を調べる多型解析、ならびに種を超えて保存されているかを確認する為の霊長類相同遺伝子の単離と機能解析を遂行した。 この結果、ヒト個体間において7つの多型が存在することが明らかとなった。確認された多型にはタンパク質の合成を止めるようなストップコドンの挿入は確認されなかったが、アミノ酸の置換を伴っていた。また、これらの塩基置換を伴うサプレシン遺伝子配列の機能を解析した結果、いずれの配列も細胞融合抑制効果を保持していた。このことから、サプレシン遺伝子配列がヒトで高度に保存されていることが明らかとなり、ヒト生体内でのタンパク機能の重要性が示唆された。次に、霊長類(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル、アカゲザル、ヒヒ)の相同サプレシン遺伝子を単離し、その機能解析を行った。この結果、チンパンジーからアカゲザルまでその遺伝子配列ならびにタンパク機能が保存されていることが証明された。 以上の結果から、間接的な証明ではあるが、サプレシン遺伝子が生体にとって重要な遺伝子であり、その機能が霊長類における胎盤形成に深く関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サプレシン遺伝子の遺伝学的、進化学的アプローチによる解析はほぼ終了し、目的を達成したと考える。また、昨年度の目的の一つであるヒト胎盤初代細胞をもちいた機能解析に関しては、順調に進展していると考える。帝王切開予定の妊婦から同意を得ていただいた胎盤サンプルを用いて、目的の絨毛細胞を効率よく単離する方法を確立した。現在これらの細胞を用いて、サプレシンによる細胞融合抑制効果を確認している。目的の表現型(細胞融合)を示す絨毛細胞を単離する方法が確立できたことから、融合抑制能を定量的に解析することが可能となり、予定通りの進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度から、もう一つの研究課題であるマウスサプレシン遺伝子の単離を開始する。これまでの解析により、サプレシン遺伝子はヒトで高度に保存されており、さらに霊長類でもその機能が保存されていた。このことから、マウスゲノム中にもこの細胞融合抑制遺伝子が存在すると予想される。反復配列の解析を伴うこの単離行程には困難が予想されるが、ESTデータベースを活用した効率的な方法で候補遺伝子を抽出し、包括的なスクリーニングによる単離・同定を試みる予定である。
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Research Products
(3 results)