2015 Fiscal Year Research-status Report
原発性腹膜癌の病因病態を解明するための分子病理学的検討
Project/Area Number |
25462617
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小宮山 慎一 東邦大学, 医学部, 准教授 (80256312)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腹膜癌 / 網羅的解析 / ribosomal protein / chemokine / バイオマーカー / 分子標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
網羅的遺伝子解析により、原発性腹膜癌の病因病態に深く関与すると考えられる遺伝子群を同定した。バイオインフォマティクスによる更なる検討の結果、RPL9、RPL10、RPL12、RPL19、RPL27A、RPL31、RPS3、RPS4X、RPS15A、RPS18、CCL5が有意に高発現しており、その関与の重要性が示唆された。そこでこれらに注目し、文献的検討を行った。その結果、RPL9、RPL10、RPL12、RPL19、RPL27A、RPL31、RPS3、RPS4X、RPS15A、RPS18といったcytoplasmic ribosomal protein群は、Ribosomal biogenesisや、p53の制御、さらには種々の固形癌や血液疾患において発現亢進が報告されており、近年急速に注目を集めていることが判明した。またchemokine群であるCCL5(RANTES)は受容体CCR5に結合し、シグナル伝達を誘導する炎症性ケモカインである。CCL5およびCCR5との複合体は、固形癌における間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)およびcancer-associated fibroblasts (CAFs)といった癌の微小環境を制御し、さらに細胞間接着の増強、血管新生にも関与することにより、癌の転移を促進する働きを示すことが判明していることから、この分子を標的とする様々な試みが始まっている。さらにCCL5-CCR5 シグナルはp53の転写活性を調節することも判明しており、アポトーシスからの回避にも影響を与えている。その一方で、原発性腹膜癌は高悪性度漿液性癌(High grade serous carinoma:HGSC)の病理組織像を呈することが多く、HGSCはp53の病的変異を高頻度に認めることも判明している。よって、これらの分子を標的とした診断および治療への応用の可能性が高いことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度のTissue bankのトラブルの影響で研究が頓挫して以来、本年度も研究が進行していない。原発性腹膜癌は稀有な腫瘍ゆえ、検体採取の機会が少ないため、研究試料の絶対数が不足している。また、本年度も数少ない症例の治療前腹水を採取し、原発性腹膜癌細胞の初代培養系の確立を試みたものの、やはり成功には至らなかった。安定した培養条件を見出すことは極めて困難であり、現時点では実現の目途が立っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
元来腹膜癌は稀な腫瘍であり、その組織を安定して多数採取することは、大きな困難が伴う。本年度も研究代表者の施設のみならず、他施設の研究協力者にも働きかけ、更なる検体収集を行い、Tissue Bankを改めて構築し直すことを試みたが、残念ながら達成することはできなかった。検体採取の問題点を改善することは極めて困難であり、今後も期待できないと考えられる。そこで新たな試料の収集は断念し、現存する数少ない試料のうち、RNAの質が担保されている検体を用いて、新たな解析を行う予定である。また更なる研究計画策定のための資料・試料収集や情報収集、さらには既存の網羅的解析で得られた遺伝子プロファイルの追加解析や、公表されているPublic databaseからのバイオ・インフォマティクスの解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
前述の通り、予定していた研究の進捗が非常に悪く、次年度も引き続き研究を継続する予定である。これまで予定していた内容を遂行するのみならず、追加の解析を計画しており、これらに繰り越した助成金を使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
RNを用いた新たな網羅的解析、既存の網羅的解析で得られた遺伝子プロファイルの追加解析、公表されているPublic databaseからのバイオ・インフォマティクスの解析、更なる追加の研究計画策定のための資料・試料収集や情報収集に使用する。
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Research Products
(23 results)