2013 Fiscal Year Research-status Report
キネシンモータータンパク質阻害剤を用いた卵巣がんに対する新規治療法の開発
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25462618
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
武永 美津子 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10236490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 有紀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (60387066)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | KSP / キネシンモータータンパク質 / 細胞周期 / 抗がん剤 / ヒト卵巣がん / アポトーシス |
Research Abstract |
キネシンモータータンパク質ファミリーの1つであるkinesin spindle protein (KSP)を標的としたKSP阻害剤は、副作用の少ない、新たな機序の抗がん剤になることが期待されている。本研究では、KSP特異的、かつ阻害活性の高い、カルバゾール誘導体構造をもつ新たな合成KSP阻害剤を用いてヒト卵巣がんに対する抗腫瘍効果をin vitroでまず検討し、最も活性の高いKSP阻害剤についてin vivoでの検証を試みた。さらにKSP阻害剤の有用性および機序の詳細を明らかにし、新たな治療法への提示を目指した。 ヒト卵巣癌細胞A2780を用いて、新規KSP阻害剤の候補化合物の細胞増殖抑制力価をMTT assayとチミジン取り込みassayによってIC50で評価したところ、最も力価が高いのはCompound 10bであった。その力価は、パクリタキセルに比べて低いものの、カルボプラチンに比べ500倍以上高い抑制作用を示した。 そこでCompound 10bを担がん免疫不全マウスに皮下投与したところ、体重減少は認められず、微小管阻害薬にみられる神経障害に伴う歩行障害は全くみられなかった。また経時的にモニタリングした腫瘍体積の増大を用量依存的に有意に抑制した。とりわけ高用量投与では腫瘍が消失した個体もみられた。以上の結果から、新規合成KSP阻害剤が、副作用の少ないターゲット効果の優れた新たな抗がん剤になる可能性が示唆された。 一方in vitroでの検討から、KSP阻害剤Compound 10bは細胞分裂期(mitotic phase)の割合を増やし、関連タンパクの発現を変動させた。さらに下流の活性酸素産生およびアポトーシス誘導作用を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 新規KSP阻害剤の細胞増殖抑制効果(in vitro)は、ヒト卵巣癌細胞A2780を用いて評価し、最も抑制力価の高いCompound 10bを見出した。 (2) 新規KSP阻害剤の抗腫瘍効果(in vivo)は、免疫不全マウスを用いて、Compound 10b投与で評価を行い、腫瘍容積の増大に対する有意な抑制を示すことを見出した。今回皮下投与での評価を行ったが、将来的に剤型の工夫が必要かもしれない。また本化合物は脂溶性が高く、内服による効果がある可能性も示唆された。 (3) 新規KSP阻害剤の毒性(in vivo)は、上記(2)免疫不全マウスに対する評価の中で、パクリタキセル投与群では神経障害を伴う歩行障害が一過性に観察された。これは正常マウスを用いた同量投与でも観察された。一方、KSP阻害剤Compound10b高用量投与でも観察されないことを確認した。 (4) 新規KSP阻害剤の正常細胞に及ぼす作用(in vitro)は、正常細胞として、他の研究に用いている脂肪組織由来間葉系幹細胞を使用して検証を行った。その結果、細胞増殖抑制力価に大きな差異があることを見出した。 (5) 新規KSP阻害剤の細胞周期・アポトーシスに及ぼす作用(in vitro)は、既に実施済である。以上より、研究進捗状況はほぼ順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したKSP阻害剤のなかで、Compound 10bが最もin vitro抗腫瘍力価が高く、in vivo抗腫瘍効果の有意な差異を見出すことができた。免疫不全マウスでのヒト卵巣固形がんに対する作用は、臨床で卵巣がんに適用されているパクリタキセルやカルボプラチンと比較しても、ほぼ同等の力価をもっているとの結果を得た。したがって、薬理効果については検証済みであり、新たな機序をもつ副作用の少ない抗がん剤となる可能性があることまで確認済みである。 一方で、KSP阻害剤は細胞分裂期(mitotic phase)の割合を経時的に増やし、関連タンパクおよびそのリン酸化発現を変動させた。さらに下流の活性酸素産生およびアポトーシス誘導作用を示すことを確認した。したがって、これら一連の流れの詳細の検討、およびパクリタキセルやカルボプラチンなどとの比較が、有用性の証明には今後必要となる。現在、細胞周期、および細胞周期に関わるタンパクおよびリン酸化の発現を鋭意検討中であり、次年度はこの点の検証に焦点をあて研究の遂行を図りたい。と同時に、学会発表を積極的に行い、論文発表に向け、投稿原稿準備にも取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は細胞培養実験(主たる経費利用;液体窒素、炭酸ガス、培養理化学機器、培地)を基礎として、動物実験(主たる経費利用;動物)に関わる評価を行い、本研究費を先にあげた種々購入費用に充てた。以上の成果を踏まえて、機序に関わる研究に重きをシフトし、比較的高価である抗体購入経費に年度後半は充てた。次年度の研究経費に、引き続き抗体購入経費等にまずは充てる予定である。 次年度の本課題研究は、機序の解明に焦点を絞る予定である。このため種々の抗体を引き続き購入して、フローサイトメーター、Western blotting解析を通じて、細胞周期、これに関わるタンパク発現、リン酸化タンパク等の経時的変動を解析する。 また学会発表を積極的に行い、さらに論文作成のための英文チェック依頼の費用にも本研究費を充てたいと考えている。
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Research Products
(1 results)