2013 Fiscal Year Research-status Report
能動的基底板振動と蝸牛内イオン流動の相互作用を解析可能な蝸牛モデル開発と臨床応用
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25462631
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小池 卓二 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10282097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蝸牛モデル / 外有毛細胞 / 基底板振動 / 能動性 / 耳音響放射 / イオン輸送機構 |
Research Abstract |
これまでに作成してきた有限要素蝸牛モデルをベースとして,外有毛細胞の伸縮力を考慮したactiveな蝸牛モデルを作成した.本モデルは,アブミ骨,骨ラセン板,基底板等の構造組織と内・外リンパ液を考慮した3次元モデルである.外有毛細胞の加振力については,マルチフィジックス有限要素解析ソフトウエアCFD-ACE+をベースとし,サブルーチンを独自開発することにより,その加振力が基底板振動におよぼす影響を考慮可能なものとした.本モデルは,過渡応答や非線形解析も可能であるため,誘発耳音響放射や歪成分耳音響放射も解析可能である.構築した蝸牛モデルの検証は,基底板の特徴周波数分布や,局所的な基底板振動振幅,蝸牛入力インピーダンスなどの各計測結果と,解析結果を比較することにより行った.外有毛細胞の加振力の大きさや非線形性については,ヒトの外有毛細胞の直接的なin vivo 計測は事実上不可能であるため,動物実験による知見をベースとしてモデル化・解析を行い,ヒトに於ける耳音響放射の計測結果と比較しながら修正・決定した. さらに,有毛細胞・コルチ器細胞群に於けるイオンチャネル,gap junction,ラセン靭帯,血管条細胞群の細胞間ネットワークモデル(電気回路モデル)を構築した.内・外有毛細胞,ラセン靭帯,血管条細胞群など,各部に関しては,既に電気回路モデルが報告されているが,それらのモデルを組み合わせ,K+リサイクリングに代表される蝸牛内イオン電流と有毛細胞の発火状態との関係を解析可能なモデルを作成した.現在,作成したモデルの有用性を検証しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蝸牛の有限要素モデルの作成については,概ね当初計画通りに実行できた.モデルによる基底板振動の計算結果と,実際の基底板振動の計測結果との比較によるモデルの妥当性の検証結果も良好であり,実際のヒト生体内の状態に近い蝸牛モデルの構築が出来たものと考えられる.一方で,本解析結果から求めた,歪成分耳音響放射の出力の絶対値には,計算結果と実測結果との間に開きがある周波数域も残されており,外有毛細胞の加振力の導入方法を更に検討していく必要がある. 蝸牛内細胞間ネットワークモデルの作成については,予定を前倒しして行った.本モデルにより,有毛細胞の膜電位や蝸牛中央階の電位の準静的な解析は可能となったが,本研究で目的としている,音受容時の有毛細胞の過渡的な膜電位変化や各部の電位振動などについては,まだ妥当な結果が得られていない. 以上より,全体的に見て「(2)おむね順調に進展している」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
蝸牛モデルに於ける有毛細胞の能動性の定式化の検討,および,蝸牛内細胞間ネットワークモデルの高周波数応答解析を行い,各パラメータを最適化する.また,これら蝸牛振動モデルと細胞間ネットワークモデルを統合し,基底板振動と蝸牛内イオン流動との連成解析を行うことのできる機械-電気ハイブリッドモデルを構築する.本モデルにより,外部からの音響振動により,蝸牛内にどのような機械的振動が励起され,それにより内・外有毛細胞の膜電位がどのように変化するのかを時間軸上でシミュレートすることを目指す.さらに,本モデルを用いて,様々な蝸牛疾患を再現し,各疾患に於いてどのようなメカニズムにより聴力が低下するのかを明確にし,更には,その効果的治療法についても検討も行う.
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Research Products
(5 results)