2013 Fiscal Year Research-status Report
真珠腫上皮のバリア機能からみた中耳真珠腫の骨吸収機序
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25462656
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
鈴木 秀明 産業医科大学, 医学部, 教授 (20187751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋田 光一 産業医科大学, 医学部, 講師 (90389461)
小泉 弘樹 産業医科大学, 医学部, 助教 (70461572)
大淵 豊明 産業医科大学, 医学部, 助教 (00412651)
若杉 哲郎 産業医科大学, 医学部, 助教 (20461569)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中耳真珠腫 / 骨吸収 / バリア機能 / 電気的インピーダンス / フィラグリン / クロージン / トリセルリン |
Research Abstract |
真珠腫上皮の透過性の変化を実際の生体で確認するため、中耳手術中に電気的インピーダンスを測定した。インピーダンス測定器はASAHI BIOMED社製Tissue Conductance Meter AS-TC100を用い、棒状電極を真珠腫上皮の腔側に数秒間軽く押し当てて測定した。12.5 mV定電圧下に320 Hzおよび30.7 kHzの交流電流を印荷した。対照組織として外耳道皮膚、耳後部皮膚および慢性中耳炎の乳突洞粘膜のインピーダンスを測定した。耳後部皮膚、外耳道皮膚、真珠腫上皮、乳突洞粘膜のインピーダンスはそれぞれ、320 Hzにおいて1440.7±311.3 kΩ, 123.2±31.6 kΩ, 40.4±12.6 kΩ, 65.1±27.4 kΩ、30.7 kHzにおいて733.2±138.5 kΩ, 241.9±26.9 kΩ, 18.4±3.5 kΩ, 218.4±98.2 kΩであった。真珠腫上皮のインピーダンスは他の組織に比べて有意に低かった。 次に真珠腫上皮におけるバリア機能蛋白の発現を蛍光免疫法により免疫組織学的に調べた。対照組織として耳後部の正常皮膚を用いた。どちらの組織でもfilaggrinは角質層を中心に、tricellulin, claudin-1, claudin-3は顆粒層と有棘層を中心に発現していた。さらにこれらのバリア機能蛋白のmRNA発現をリアルタイムPCRにて調べたところ、真珠腫と耳後部皮膚の間には有意な差が認められた。 以上より、真珠腫上皮の透過性は亢進しており、その原因はバリア機能蛋白の発現が変化しているためではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気的インピーダンスの測定については十分な症例数が達成できた。バリア機能蛋白の発現については、免疫組織学的な検討はほぼ完了したが、リアルタイムPCRによるmRNAの発現についてはもう少し症例数を追加する必要があり、平成26年度に追加実験を行う予定である。全体として実験計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
真珠腫上皮および対照組織としての耳後部正常皮膚におけるバリア機能蛋白(filaggrin, tricellulin, claudin-1, claudin-3)のmRNAの発現をリアルタイムPCRで、症例を増やして検討する。発現に明らかな有意差があるものを特定し、ex vivoにおける刺激下での発現の変化を調べる。すなわち採取した真珠腫組織を培養液中に浸し、表皮バリア機能に影響を及ぼすとされているTNF-alpha, IL-1, IL-17, IL-22, IL-25, IL-31などの種々のサイトカインを加えて短期組織培養した後、免疫組織染色、ELISAによる蛋白の定量、リアルタイムPCRによるmRNAの定量によってバリア機能蛋白の発現の変化を調べる。さらに同様の条件で短期培養した組織に空間トレーサー(ランタン)を負荷し、グルタールアルデヒドにて固定後、エポキシ樹脂に包埋し、透過型電子顕微鏡下に侵入したランタンを観察する。 さらに次の段階では、上記の短期培養系に副腎皮質ステロイド薬、オレアノール酸、ウルソール酸などの表皮バリア機能を調整する作用を持つ薬剤を負荷し、免疫組織染色、ELISAによる蛋白の定量、リアルタイムPCRによるmRNAの定量、透過型電子顕微鏡による空間トレーサーの観察を行う。 以上より中耳真珠腫における骨吸収機序のモデルを確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入したインピーダンス測定器(Tissue Conductance Meter AS-TC100, ASAHI BIOMED)の金額が予定よりも少なかったため。 未使用金は試薬等の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)